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第100話 仲間

ラジールが邸に来て2日が経った。 伯爵様がラジールに出した課題は侍従見習いになって邸の使用人たちに認められること。 7日後に使用人たちに評価を聞いて悪い所が無ければ伯爵様自身はラジールを邸に置いても良いと考えている。 使用人たちに認められる事は、ラジールのコミュニケーション能力が試される。 その他に会話術もだ。 ラジールは元々クラーク団のボスだった。 面子はどうであれ、あれだけの人数に慕われていたんだ。 コミュニケーション能力は十分だと思う。 俺は見つからないようにラジールの様子を眺めていた。 今は庭師と一緒に庭の手入れをしているみたいだった。 庭師は結構な歳で、グロウ邸の広い庭を手入れするのは大変そうだった。 様子を見ていると、庭師もラジールも楽しそうに笑いながら作業をしている。 時折ラジールが庭師に何かを訪ねて、庭師がそれに答えてる様子も見られた。 ちゃんと指示を聞くかどうかが心配だったけど、大丈夫みたいだな。 そう思って俺は邸の中に入ろうとして、ふと窓の所にアランが居ることに気付いた。 アランの目線を追うと、ラジールに行き着いた。 ……アランもアランで、ラジールを見極めようとしてるのかな。 ラジールは悪い奴じゃないって、アランもそれは分かってると思う。 でもそれを認めたくないだけ。 何か切っ掛けがあれば良いんだろうけどな。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (アランside) ディラント様と旦那様にラジールを見極めるよう言われた。 だからこの2日間ずっと見ていた。 ラジールはこの2日で使用人たちとすっかり馴染んでるように見える。 他の使用人たちはラジールをただの従者見習いだと思っている。 ラジールの事を知っているディラント様や旦那様までラジールの事を信じているように見える。 分からない、何故ディラント様たちは無条件でラジールの事を信じられるんだろう。 「アラン」 そんな事を考えながらラジールを眺めていると、声を掛けられた 「……アルマ様」 アルマ様が窓の外に視線を向ける。 「ラジールの事を見ていたのか」 「……ラジールを見極めるよう、ディラント様たちに言われましたから」 「納得出来ないか?」 そう聞かれても、答えることが出来なかった。 「あの方たちは人を見る目はあると思うよ」 「アルマ様はあいつを認めてるんですか?」 「まだ認めるほどラジールを知らないからね」 そう言うアルマ様からもう一度ラジールに視線を向ける。 私情が入ってるのは分かってる。 でも割り切ることが出来ない。 「アランはもろに被害を受けているから受け入れられないのも仕方ない。まだ日にちはあるからゆっくりと見極めると良い」 そう言ってアルマ様は俺の頭に手を乗せた。

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