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第101話 ∥
(アランside)
ラジールが来て5日が経った。
旦那様が示した期日まであと2日。
俺はいまだに答えが出せないでいた。
ラジールの話では、あの時俺を刺したのはクラーク団の人間では無いらしい。
幼い子供を使っての犯行だから足もつきにくく、いまだに犯人は特定出来てない。
俺としては、犯人が捕まろうがそれはどうでも良い。
ただ、そのせいでディラント様が危険は目にあうのだけは避けたかった。
「ラジールとは何か話をしたのかい?」
旦那様の手伝いで書類の整理をしていると、不意に旦那様がそう聞いてきた。
「…していません」
「アランも意外と頑固だね」
そう言って旦那様がため息をついた。
………呆れさせてしまったか。
「私はね、ラジールはそんなに悪い奴ではないと思ってるんだよ。実際、よく働いてくれていると思うよ」
ラジールがよく動いてるのは分かってる。
力仕事だろうが、雑用だろうが文句も言わず笑顔でこなしている。
使用人たちの評判も悪くない。
皆はラジールを受け入れようとしている。
つい最近までスラムに居た奴を……
スラムでは裏切られるなんて日常茶飯事だった。
信じる方が悪い、信じるだけ損をする。
スラムではそういう考えが当たり前だった。
俺もスラムに居たころは信じられるのは自分だけ、そう思って生きてきた。
だからこそ、俺はラジールが信用出来ない。
どうしても何か企んでいると疑ってしまう。
「一度面と向かって話してみるのも良いと思うけどね」
「………考えておきます」
旦那様とそんな事を話していると、部屋の外が騒がしくなった。
バタバタと幾つかの足音が聞こえてくる。
何事かと思っていたら、執務室の扉が勢いよく開けられた。
入ってきたのはアルマ様と騎士団長のフラル様で、とても慌てた様子だった。
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