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第102話 ∥

(アランside) 「ディラント様が居なくなった!」 アルマ様がそう叫びながら部屋に入ってくる。 「どういう事だ!?」 旦那様も勢いよく立ち上がり、驚愕の表情を見せる。 「ディラント様が庭で遊んでいて、少し目を離した隙に………」 フラル様がそう説明をして『申し訳ありません』と頭を下げる。 でも俺にはそのやり取りはどうでも良かった。 ………ディラント様が居なくなった? なんで……? 俺はハッとして部屋を飛び出した。 後ろから旦那様の声が聞こえたけど、答える余裕は無かった。 俺は邸内を走り、庭の奥にあるバラ園を目指した。 俺はそこでバラの手入れをしていたラジールに掴み掛かった。 「ディラント様を何処にやった!?」 「はぁ!?」 突然掴み掛かった俺にラジールが驚いた表情を見せる。 「お前なんだろ!?ディラント様は何処だ!?」 「ちょっと落ち着け!」 ラジールの胸ぐらを掴んでいた手を外され押さえ付けられる。 「ディラントが居なくなったのか?」 そう言ってラジールが俺を覗き込む。 その目は本当に知らないみたいだった。 「………お前じゃないのか?」 じゃあディラント様は何処に…? 俺はディラント様を探す為にその場を離れようとした。 「ちょっと待て」 そう言ってラジールに止められる。 「何処に行くつもりだ?」 何処って…… 「闇雲に探しても見つからないぞ」 「………そんな事、言われなくても分かってる」 そう言うと、ラジールからため息が聞こえてきた。 「ちょっと待ってろ」 ラジールがそう言って俺の頭に手を置くと、邸に戻っていった。

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