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第103話 ∥
(アランside)
しばらくすると、邸の中に入っていったラジールが戻ってきた。
……って、何で俺素直に待ってるんだ!?
今更ながらにラジールを素直に待っていることに気付いてハッとした。
ラジールを待たずにディラント様を探せた筈なのに、何故か待ってしまって少し戸惑ってしまう。
戻ってきたラジールと目が合うと、俺がちゃんと待ってたことに笑みを浮かべる。
俺は思わず顔を逸らしてしまった。
「伯爵から話を聞いてきた。じゃあ行くぞ」
ラジールがそう言って歩き出す。
「行くって何処に?」
「何処って、ディラントの所しかないだろう?」
ラジールは邸を出て真っ直ぐ街に向かう。
ディラント様を探すわけでも無く、目的地がはっきりしてるみたいだった。
「おい!何処に行くんだ!?」
俺は前を歩くラジールの腕を掴む。
「だからディラントの所だって、さっきから言ってるだろ」
「何でお前がディラント様の居場所を知ってる?やっぱりお前がディラント様を拐ったんだろ」
そう言うと、ラジールが呆れたようにため息をついた。
「お前が俺を警戒してた事は知ってる。俺はスラム出身だからな」
そう言われて、一瞬言葉に詰まる。
「でも今更ディラントに何かするつもりはない。ディラントは俺が認めた奴だ。そのディラントに尽くしはしても、害する事はない」
『その意味、お前なら分かるだろう』とラジールは言う。
スラムでは強者や自分が認めた者につく傾向がある。
そうでもしなければ、スラムでは生きていけないからだ。
それはある意味本能とも言える。
「お前は本当にディラント様の事を……?」
「じゃなきゃここに居ない。お前だってそうだろう?お前もディラントの事を慕っているだろう」
ラジールのその言葉に答える事は出来なかった。
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