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第105話 ∥
「すいません、こんな事に付き合わせてしまって」
俺は空き家に着くと、護衛として一緒に来てくれていたレオンさんに謝る。
「いえ、大丈夫ですよ」
そう言ってレオンさんは笑う。
「でも本当に隊長さんには言わなくて良かったんでしょうか」
「問題ありません。むしろあの人に知らせると確実に失敗します」
そう言うと、レオンさんがとても爽やかな笑顔を見せる。
俺は何となく、騎士団の力関係が見えた気がした。
今回の俺の失踪は自作自演だ。
伯爵様やレオンさんにも協力してもらっている。
それはアランとラジールが話出来るようにするため。
アランはなかなか踏み出せないみたいだし、ラジールも相手から来なければ自分からは行かないタイプだと思う。
そんな二人を引き合わせようと思ったらこんな事しか思い付かなかった。
俺が居なくなれば、アランは犯人がラジールだと思って向かっていく。
いがみ合いでも何でも良い、少しでも話す切っ掛けになればと思った。
だからこの計画を思い付いた時に伯爵様とアルマさんとレオンさんに相談した。
ちなみに騎士団長のフラルさんはこの事を知らない。
空き家に来てレオンさんとお茶を飲んでいると、レオンさんの元に鳥が飛んできた。
その鳥がレオンさんの肩に止まる。
レオンさんは急かさず鳥の足についた手紙を呼んだ。
「二人が来るんですね」
そう聞くと、レオンさんが頷いた。
手紙を受け取ったレオンさんは鳥を窓の外に放った。
「ラジールは気付いたみたいです」
手紙の内容を見てレオンさんが呟く。
「ラジールなら気付くでしょうね」
そう言って笑って見せると、レオンさんが不思議そうに見てきた。
「ディラント様はどうしてそこまでラジールに肩入れするんですか?」
そう聞かれて考えてみる。
「肩入れしてるつもりは無いんですけど……ラジールは行動が単純なので見ていれば自ずと人間性が見えてくるんです」
ラジールは本当に単純だった。
自分が好きな事や相手にはすごく友好的だ。
おまけに兄貴肌で面倒見が良い。
視野が広くて判断力もあっていざという時頼りになる。
「この計画をした時、ラジールにはすぐに気付かれるだろうとは思ってたんです」
そう言う俺に、レオンさんはため息をついた。
「貴方は……本当にすごい方ですね」
そう呆れ気味に言うレオンさんに、俺は意味が分からなくて首を傾げた。
レオンさんとそんなやり取りをしていると、部屋の扉が開けられた。
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