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第107話 ∥
アランたちと共に邸に戻ると、早速伯爵様と話をすることになった。
ちなみに俺は邸に戻ってきた途端、事情を知らないフラルさんに抱え込まれて泣かれた。
中々離してくれないフラルさんを、見かねたレオンさんが引きずっていった。
そんなこんなで、俺たちは出迎えてくれたアルマさんの案内で伯爵様の執務室に来ていた。
「アラン、すまなかった」
落ち着いたところで伯爵様がアランに謝る。
俺とアルマさんも一緒に頭を下げた。
その様子にアランが慌てる。
「あ、頭を上げて下さい!」
そう言われて頭を上げた俺たちにアランがホッと息を吐いた。
「今回の事、ディラント様に伺いました。確かに最初は騙された事に怒りもありましたが、気付かされる事の方が多かった」
アランが俺を見る。
「気付かせてくれた事、ディラント様には感謝しています。ですから謝らないで下さい」
そう言ってアランは笑った。
「では本題に入ろうか」
伯爵様が息を吐いて気を取り直してそう言う。
「ラジール」
伯爵様が扉のすぐ横で待機していたラジールに声を掛けた。
ラジールが呼ばれた事でこちらに来る。
「ラジール、今もディラントの傍に居たいと言うその気持ちに変わりはないかな?」
「変わる訳がない」
ラジールがそう即答すると、伯爵様が『ふむ』と頷く。
「ラジールの使用人たちからの評判は悪くない。むしろよくやってくれていると思っている」
そこまで言うと、伯爵様がアランに視線を向ける。
「アランはどうだい?」
伯爵様にそう聞かれて、アランは少し視線を下げた。
「……私はまだラジールの事が信用出来ません」
そう言ってアランはラジールを見る。
俺たちは黙ってアランを見守った。
アランは伯爵様の所に来るまでかなり大変な目にあったと聞いている。
そんなアランがつい最近までスラムに居たラジールをすぐに信用出来ないのは仕方の無いことだと思う。
「だから、もう少し見極めたいと思います」
そうアランが言う。
……すごい分かりにくい言い方。
そう思って、俺は思わず笑ってしまった。
「…それは、ラジールを邸に置いても良いという事かな?」
伯爵様もアランの意図を理解して少し笑いを堪えてる。
「違います。もう少しだけ見極める期間を延長してもいいという意味です」
「……そうか」
そう言うアランに、伯爵様が今にも吹き出しそうだ。
本当、素直じゃないな。
そう思いながら見てると、ラジールがぽかんとしてる事に気付いた。
伯爵様もラジールの様子に気付いたみたいでコホンと咳払いをした。
「アランのお許しも出たことだし、ラジールを正式に雇うことにするよ」
そう言う伯爵様にアランは『許してない』とでも言いたげな表情をしていた。
ラジールはきょとんとしている。
普段は鋭い癖にこういう事には疎いんだな。
「ラジール、このまま邸に居ても良いって事ですよ」
「……それってディラントの傍に居て良いって事?」
そう言うラジールに頷くと、漸く理解したラジールがパァと笑顔になる。
「やったー!!」
そう叫んでラジールが抱き付いてきた。
「こら!ディラント様から離れろ!」
抱き付いてきたラジールをアランが引き剥がす。
「え~、少しくらい良いじゃん」
引き離されたラジールが不貞腐れた表情をする。
そこから二人の良い争いが始まってしまった。
なんだかんだで良いコンビだな。
二人のやり取りを見て、そう思った。
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