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第113話 ∥
アランとラジールが正式に俺の従者になった。
俺専属の従者って言われても俺にはどうしたら良いのかよく分からないけど。
伯爵様との話が終わって部屋に戻った俺はというと、何故かラジールに抱えられていた。
ラジールをチラッと見ると、余程嬉しいのかずっとニコニコしていた。
「……あの、いい加減下ろしてくれませんか?」
そう言うと、ラジールがきょとんとする。
「どうして?」
そう言って首をこてんと傾げた。
「……どうしてって、流石にずっと膝に乗せられてるのは……」
「……だめ?」
そう言ってラジールはあからさまにシュンとする。
その頭には垂れ下がった犬耳が見えた。
くっ!
わんこなラジールに流されそうになってしまう。
でも流石に実年齢27にはこの体勢は精神的にきつい。
そう思ってラジールをチラッと見ると、いまだに耳が垂れている。
幻覚だと分かっててもどこか可愛いと思って、俺は思わずラジールの頭を撫でてしまった。
ハッとしてラジールを見ると、ラジールはぽかんとしている。
しまったと思って、俺は慌てた。
「す、すいません」
そう言って手を離すと、ラジールがニッコリ笑って頬を擦り寄せてきた。
「大丈夫、もっと撫でて」
………今度はブンブンと揺れる尻尾が見える。
俺は仕方ないなと思って小さく息を吐くと、もう一度ラジールの頭に手を伸ばした。
その瞬間、伸ばした手を掴まれた。
「それ以上ラジールを甘やかさないで下さい」
ラジールの頭を撫でようとした俺の手を掴んで、アランがそう言う。
その声は冷たくて、一瞬アランが怖かった。
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