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第115話 ∥
(アランside)
ディラント様が休まれた後、俺は廊下で一人ぼんやりと窓の外を眺めていた。
あの感情はなんだったんだろう。
殺意とは違う、自分でも押さえられなかった。
あんな黒くてドロドロした感情、生まれて初めてだ。
「あんたでもそんな顔するんだな」
ラジールがくくっと笑いながらそう言う。
「なんの用だ?」
「そんな冷たくしなくても良いじゃん」
そう言うラジールを睨む。
「ディラントが俺を構うから妬いてるんだろ?」
「『ディラント様』だ。何度言えば分かる」
そう言う俺に不敵な笑みを続けるラジールにイラッとした。
「普段でも従者として接しないと我慢出来ないか?」
「……何の話だ」
ラジールの訳の分からない話に、更にイラつく。
「あんた、ディラントの事好きだろ」
ラジールが『好き』と口に出した途端、胸がざわついた。
「……主をお慕いしているのは当然だろ」
そう言うとラジールがため息をつく。
「本当に気付いてないのか」
本当に、ラジールは何の話をしているんだ。
こいつの行動の意味が分からない。
「まぁ良いや」
そう言ってラジールが俺を見る。
その目に一瞬ドキリとした。
「あんたが気付かないならそれで良い。ディラントは俺が貰うから」
そう言ってラジールは去っていった。
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