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第117話 ∥
フラルさんとレオンさんの案内で訓練場に入る。
訓練場では既に数人の騎士たちが打ち合いをしていた。
すごい!
カーンカーンと剣がぶつかり合う音が響く。
俺はその迫力に目を奪われた。
「ディラント様、本日は剣の握り方と素振り、後は的を使って打ち込みをしてみましょう」
打ち合いをしている騎士たちを見ていると、後ろからレオンさんが言う。
「はい、よろしくお願いします」
「訓練にはこれを使います」
そう言って現れたのはフラルさん。
その手には剣が握られていた。
剣と言っても訓練で使うのは木で出来た剣、木剣だ。
フラルさんから木剣を手渡されて、俺はそれを受け取った。
木剣を手に取った瞬間、ズシッとした重みが伝わってくる。
……思ったより重たい。
木剣は俺が両手で持ってなんとか振れるくらい。
一度手にしたことのある木刀をイメージしていた俺は、思いの外重い木剣に少し驚いた。
「では、ディラント様!早速始めましょう!」
とフラルさんが意気揚々と言った。
「剣をこう持って、こうグワッと…」
剣術の稽古を初めてしばらく、フラルさんは見本を見せながら説明してくれる。
してくれるんだけど、『こう』とか『グワッ』とかばかりで要領を得ない。
………そうだった、この人脳筋だった。
脳筋のフラルさんは基本感覚で動くから、いざ説明しようとすると全く説明出来ていない。
そんなフラルさんにレオンさんはため息をつき、アランとラジールは呆れていた。
「団長は引っ込んでてください」
見かねたレオンさんがフラルさんの首根っこを引っ張って下がらせる。
隅に追いやられたフラルさんはしょんぼりしていた。
俺はその様子に思わず苦笑が漏れた。
「申し訳ありません。ここからは私が指導させて頂きます」
そう言ってレオンさんが微笑んだ。
「……お願いします」
その後はレオンさんに剣の握り方や構え方を教えてもらった。
「ディラント様は体幹がしっかりされてますね。何かされているのですか?」
「体術の形はずっとやっていたので」
「そうですか。どなたかに師事を?」
「…ぁ…いえ、独学です」
そう答えると、レオンさんは『そうですか』と頷いた。
……これは誰かに師事を受けたと答えた方が良かったのかな?
でも俺が今まで関わった人は限られてるから、誰って聞かれると困る。
そう思って、俺はとりあえずこの話には触れないでおこうと決めた。
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