120 / 226

第118話 ∥

レオンさんに教わった通り素振りをしていると、振り辛そうにしている俺に気付いてレオンさんが等身の短い木剣を持ってきてくれた。 それを受け取って振ってみると、さっきより軽い分断然振りやすかった。 レオンさんの話では、フラルさんが持ってきたのは騎士たちが普段使うロングソードを模していて、当然重量もある。 俺が今使っているのはショートソードだそうだ。 体格に会わない物を無理に使うと、体を痛めてしまうらしい。 俺はそれを聞いて納得した。 当のフラルさんはというと、レオンさんに『体格も考えずロングソードを渡すなんてなに考えてるんですか!』と怒られて、またしょんぼりしていた。 フラルさんの話では、つい騎士たちに渡している感覚でいつも通り渡してしまったとのこと。 悪気があった訳じゃないから許してあげて欲しい。 素振りも様になってきた事で、レオンさんが次は的を使ってみようと言った。 ここでの的というのは、木の棒に布を巻いたもの。 これを相手に見立てて打ち込みをする。 剣道をやった時でも素振りまではしてたけど、打ち込みは初めてだ。 そう思ったら少しドキドキした。 「ディラント様、落ち着いてください。的をよく見て、さっきの素振り通りに」 少し離れた場所からレオンさんがアドバイスをくれる。 俺はさっきの素振りを思い出して木剣を頭上まで持ち上げると、それを思い切り振り下ろした。 ……………… ………………………あれ? 木剣の振り下ろした筈なのに全く手応えがない。 よく見てみると、俺が振り下ろした木剣の切っ先は的をかすめることも無く、的の手前に降りていた。 どういうことなのかと思ってレオンさんを見ると、レオンさんも固まっている。 「……レオンさん」 俺がレオンさんを呼ぶと、レオンさんがハッとした。 「ディ、ディラント様、もう一度。もう一度やってみましょうか」 レオンさんにそう言われて、俺はもう一度構えて振り下ろした。 もう一度やってみた結果、俺の振り下ろした木剣は的に切っ先すら当たらなかった。 ………なんで? 「ディ、ディラント様もう一度、もう一度やってみましょう。今度は当てられますよ」 レオンさんにそう言われて、俺はもう一度気を取り直して的の前に立った。 しっかりと的との距離を確認する。 俺は呼吸を整えると、的目掛けて木剣を振り下ろした。 結果、何度やっても俺の剣は的に当たらなかった。 ………止まってる的にすら当てられないなんて。 そう思って、俺は膝から崩れ落ちた。

ともだちにシェアしよう!