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第119話 ∥
的目掛けて何度か木剣を振り下ろすけど、結局一度も的に当てられなかった。
その原因が分からず、俺は頭を抱えた。
なんで!?なんで止まってる的に当てられないの!?
「ディラント様、大丈夫ですか?」
しゃがみこんでる俺に、レオンさんが心配そうに覗き込んでくる。
「……レオンさん」
「そんな顔をしないで下さい。何故的に当てられないのか、一緒に考えましょう」
そう言って微笑むレオンさんに、俺は小さく頷いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(レオンside)
ディラント様の剣術の指導に当たって、一番の懸念は剣が振れるかどうかだった。
ディラント様は他の同年代の子供より体が小さく力も弱い。
そんなディラント様が剣術を始めるのは早いと思っていた。
でもそれは良い意味で裏切られた。
団長のせいで重たい木剣を振り辛そうにしてた以外はしっかり出来ていた。
握りを教えればすぐ覚え、振りもしっかり出来ていて体が全くぶれていない。
ディラント様に何かしているのかと聞いてみると、体術の形をしていると言った。
誰にも師事は受けていないと言う。
誰にも師事を受けずにここまでしっかりした体幹が身に付くのだろうか。
でもディラント様はそれ以上聞いてほしくない様子で、私は訪ねる事を止めた。
立ち姿勢も素振りもしっかりしている事で、次は的を使っての打ち込みに移行した。
私はディラント様なら難なくこなすだろう思っていた。
しかし、何度剣を振り下ろしてもディラント様の剣は的を捉える事が出来なかった。
的に当てられない事でしゃがみこんでしまっているディラント様に声を掛けた。
顔を上げたディラント様は今にも泣きそうな表情をしていた。
私が『原因を一緒に考えましょう』と言うと、ディラント様が小さく頷く。
それでもディラント様は俯いて落ち込んでる様子だった。
ディラント様の形を見る限りおかしなところは無い。
なのに何故的に当てられないのか………
「なんだ、的に当たらないのか?」
考え込んでいる私に団長が声を掛けてきた。
「団長……」
団長はディラント様の様子を見て、『ふむ』と頷いた。
団長は脳筋で他に教えることが下手な人だ。
一生懸命なのは分かるけど、残念な頭をしている為、それを他人に伝える語彙力を持っていない。
しかし、この人は人をよく見ている。
団長だったら、原因が分かるかもしれない。
「ディラント様、もう一度剣を振ってみて貰えませんか?」
そう団長が言う。
私はその様子を静かに見守った。
ディラント様は団長の指示に従ってもう一度剣を振り下ろす。
団長がディラント様の形を見て頷いている。
団長は次にディラント様を的の前に立たせた。
そこでも団長は頷いていた。
……何か原因が分かったんだろうか。
そう思って、私は団長を見た。
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