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第124話 ∥

あれはもう手合いじゃない。 あれはただの斬り合いだ。 このままじゃ、どちらかが怪我をする。 そう思って、俺は二人の元に走った。 アランが体勢を崩してラジールの刃がアランに向かう。 間に合わないと思った俺は、咄嗟に風魔法を使った。 風がラジールの刃を防いで一瞬の隙が出来た。 俺はその隙にラジールの手を掴んだ。 「そこまで!」 そう叫んで二人の間に入る。 二人はぽかんとして固まっていた。 「これ以上は怪我をするのが目に見えています」 なんだろう、頭がグラグラする。 「手合いをするのは構いません。 ………でも、これ以上は駄目…です」 力が入らない、視界が歪む。 不味いと思った時には、もう遅かった。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (アランside) 俺たちを止めたディラント様の顔色が悪いのに気付いた。 ディラント様の体がグラッと揺れた。 俺とラジールは倒れそうになるディラント様を受け止めた。 「ディラント様!?」 「ディラント!?」 慌ててディラント様を見ると、ディラント様は意識を失っていた。 「何で急に倒れたんだ!?」 気を失ってるディラント様を見て、ラジールが狼狽える。 「俺にも分からない」 そう言って俺は首を振った。 ついさっきまで剣を振ってたし、体調が悪いようには見えなかった。 なら何故?何で急に倒れたんだ? 俺とラジールはディラント様が倒れた原因が分からなくてどうすることも出来なかった。 「落ち着きなさい。ディラント様は大丈夫ですよ」 俺たちが狼狽えると、そう声を掛けられた。 「……レオン様?」 レオン様がディラント様の頬に触れて様子を見る。 「ディラント様は魔力切れを起こしているだけです」 「……魔力切れ」 俺はディラント様を見る。 「……ディラントは大丈夫なのか?」 心配そうに聞くラジールに、レオン様が微笑む。 「大丈夫ですよ、少し休めば回復しますから」 レオン様にそう言われて、俺たちはホッと息を吐いた。

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