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第126話 ∥
(アランside)
俺はディラント様の倒れる原因を作ってしまった事を後悔して部屋に籠っていた。
昼間の事を考えるとため息が出る。
ただの手合いだったはずが、熱くなりすぎた。
ラジールのあの言葉を聞いた時、動揺を隠しきれなかった。
ラジールがディラント様に特別な感情を持っている事は気付いていた。
『俺はディラントの事が好きだ』
『俺はディラントを生涯の相手だと思っている』
昼間のラジールの言葉を思い出す。
その瞬間、ざわりと胸がざわついた。
ディラント様とラジールが一緒に居るところを想像すると胸がざわつく。
とても心穏やかでは居られなかった。
『触るな』
『お前なんかにディラント様は渡さない』
そんな黒い感情が次々に溢れてくる。
……あぁ、そうか俺は……
俺はまたため息をついた。
ディラント様に抱く感情は、ずっと敬愛だと思っていた。
ディラント様は俺が認めた、俺の主。
当然、敬うべき存在だ。
でもそれとは違う感情が確かに俺の中にあった。
「お前は俺に『まだ気付いてないのか』と言ったな」
俺は何故か居るラジールに声を掛けた。
「突然なに?」
そう言ってラジールが首を傾げた。
倒れる原因を作ってしまった俺は、ディラント様に会わせる顔がないと思って部屋で反省していた。
そこに何故かラジールも着いてきた。
ラジールは部屋まで着いてきて、居座っている。
「お前は俺の気持ち、いつから知っていた?」
そう聞くと、ラジールがきょとんとする。
その後ラジールはニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「漸く気付いたんだ」
「………あぁ」
『気付いた』
それはしっくり来なかった。
『認めた』
多分、これが一番正しいと思う。
この感情はずっと前から俺の中にあった。
でもそれは抱いてはいけない感情だと無意識に蓋をしていた。
確かにそこにあったのに見ようともしなかった。
でも一度気付いてしまったら、もう目を逸らす事なんて出来ない。
俺はラジールを真っ直ぐ見た。
「俺はディラント様が好きだ」
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