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第127話 ∥

(ラジールside) 初めてディラントを見たとき、こんなキレイな人間は初めてだと思った。 ディラントと別れてもディラントの事が頭から離れなかった。 次にディラントに会ったとき、俺は自分の気持ちを確信した。 俺はディラントの傍に居るためにこの邸の侍従見習いになった。 でもディラントの傍にはあいつが居た。 アラン・リード。 この邸の主の侍従だと聞いていたけど、あいつはいつもディラントの傍に居た。 あいつのディラントに向ける視線が俺と同じものだと気付くにはそんなに時間は掛からなかった。 でもあいつ自身、自分がディラントをどんな目で見ているのか気付いていないみたいだった。 最初は気付かなくても良いと思っていた。 むしろ気付いて欲しくなかった。 でも無意識にディラントに対して大切なものを扱うように接するあいつが何故か気に入らなかった。 だからあいつに自分の気持ちに気付くように動いた。 これはあくまで俺の自己満足。 気付かない方が俺に取っても良いはずなのに、何でこんなことをしたのか俺自身も分からない。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (アランside) 「ところで、何でお前はここに居るんだ?」 そう聞くと、ラジールが目を泳がせる。 「………お前がディラントのところに行かないから」 そう言って顔を背けた。 俺がディラント様の所に行かないからって、それはラジールには関係の無いことだと思う。 「…………悪かったな、俺が手合いなんかに誘ったから………」 ラジールが顔を背けたままそう呟く。 俺はその言葉に驚いた。 「………お前でも謝ることあるんだな」 ラジールは謝ることが出来ないタイプだと思っていた。 そう言うと、ラジールが少しムスッとする。 「俺だって悪いと思えば謝罪くらいする」 そう言ってラジールはまた顔を背けた。 そんなラジールを見て、俺は思わず笑ってしまった。 「……お前はディラント様に伝えるのか?」 一頻り笑って落ち着くと、そう切り出す。 「そっちはどうなんだ?」 ラジールがそう聞いてきた。 俺はディラント様が好きだ。 それは間違いない。 でも…… 「今は伝えるつもりはない」 「それで良いのか?」 「ディラント様はまだ幼い。今、気持ちを伝えても困らせるだけだと思う」 そう言うと、ラジールが首を傾げる。 「困らせるかもしれないけど、ディラントだったらそのまま受け止めそうだけどな。それに、ディラントに『幼い』は適切じゃない」 そう言うラジールに妙に納得してしまった。 一度だけディラント様が年相応の行動をとった事がある。 あのくらいの歳の子供の行動なら当たり前の事なのだろう。 でもディラント様がそういう行動をとるとどうしても違和感を感じてしまう。 「違いない」 「だろ?」 そう勝ち誇ったように言うラジールに、俺は吹き出してしまった。 「じゃあ、そろそろ開けてやっても良いんじゃないか?」 そう言ってラジールが扉を指差した。

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