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第131話 ∥

(ラジールside) 一瞬、ディラントが消えそうになった。 気配が希薄になり、姿がぼやけた気がして俺は咄嗟にディラントの腕を掴んだ。 ディラントの腕を掴むと、確かな存在を感じた。 俺はその存在感にホッと息を吐いた。 あれは何だったんだ。 ディラントの存在そのものが消えるような感じ…… 俺はさっきの事を思い出して更にディラントの腕を握った。 ふと反対側を見ると、アランもディラントの腕を掴んでいた。 ……こいつもあの感じを感じたのか。 「ど、どうしたんですか?」 そんな事を考えていると、ディラントがそう言う。 俺は戸惑ってるディラントをじっと見た。 今のディラントからは、さっきみたいな消えるような感じはしない。 ちゃんとここに居る。 でも何故か不安は消えなかった。 「……ずっと一緒に居てくれる?」 そう聞くと、ディラントは悲しそうに笑った。 「申し訳ありません、それは約束出来ません」 そう言ってディラントの瞳はまた俺たちを写さなくなる。 そんな悲しそうな瞳で、ディラントは何を見てるんだろう? ずっと俺を見ていて欲しいと思うのに、ディラントの瞳は時折俺たちを写さなくなる。 どこを見ているのか気になるのに、それには触れてはいけないような気がして聞けないでいた。 「そんな不安そうな顔をしないでください」 そう言ってディラントが俺に向けて微笑む。 ……無意識に表情に出てたのか。 そう思って下を向くと、ディラントが俺たちの手を握ってきた。 「『ずっと一緒に』なんて無責任な約束、俺には出来ないけど……今は一緒に居るから」 そう言うディラントを見ると、その瞳にはしっかりと俺が、俺たちが写っていた。 「俺から離れる事はないから……今はそれじゃ駄目ですか?」 と今度はディラントが不安そうな表情を見せる。 なんとなく隣に居るアランに視線を向けると、アランと目が合った。 アランと目が合った瞬間、不思議とアランの考えてることが解った。 『いえ、今はそれで構いません』 アランがそう言ってディラントの前に跪く。 ディラントとはずっと一緒に居たい。 でもずっと一緒に居られるかなんて、そんな事俺にも分からない。 その答えをディラントに託してしまった俺は狡いと思う。 もう『ずっと一緒に』なんて聞かない。 だから今は、今だけは一緒に居させて欲しい。 俺がディラントの助けになれるように…… 「俺も、今一緒に居たい」 そう言って俺もディラントの前に跪いた。

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