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第135話 ∥
俺はアランとラジール、ルオと一緒に伯爵様の元に向かった。
15になるシャロウネは今年エクレール学院に入学する筈。
エクレール学院はイノラバのメインストーリーの舞台になる場所だ。
エクレール学院を舞台にヒロインと攻略対象たちとの恋愛物語が繰り広げられる。
ディラントになって7年、俺が記憶しているイノラバと今ではかなり違う展開になってきている。
一つはリオネスと婚約する筈のシャロウネが婚約していない事。
シャロウネはデビュタントでリオネスに一目惚れして婚約までこぎ着ける。
ゲームでのシャロウネの設定は我が儘で傲慢な令嬢。
ゲーム内で、ヒロインに出会ったリオネスがヒロインに惹かれることで嫉妬したシャロウネがヒロインを排除しようとする。
その事がリオネスにバレて断罪される。
よくある、絵に描いたような悪役令嬢だ。
でも俺の知っているシャロウネは我が儘はたまに言うもののそれは可愛いもので、それこそ傲慢とは程遠い。
それにアランとラジールの存在。
アランルートではラジールは一瞬出てくるくらいで殆ど出てこない。
逆にラジールルートではアランは最初にチラッと出てくるくらいで、後半は全く出てこない。
そもそもアランとラジールが一緒に居ること自体があり得ない事だ。
一番驚いたのは、結婚観を教わったときだ。
エクレール王国では政略結婚はあるものの、基本恋愛結婚が推奨されていた。
貴族、平民関係なく好きになれば身分がどうであれ結婚出来る。
同性結婚が許されていると聞いたときは思わず『乙女ゲームなのに!?』と叫んでしまって一緒に教わっていたシャロウネと、シャロウネについていたリーナさんが驚いていた。
俺はその時の光景を思い出して苦笑した。
でもそれは仕方ないことだと思う。
"俺"にとってはこの世界は乙女ゲームの世界で、当然ヒロインと攻略対象たちによる恋愛もあるものだと思っていた。
でも今の現状がゲームとはかけ離れている。
もしかしたら、俺の記憶なんてもうあてに出来ないのかもしれない。
そんな事を考えていると、伯爵様の執務室の前に辿り着いた。
アランがドアをノックして名乗ると中から入室の許可が出る。
中に入ると、シャロウネも居た。
シャロウネと目が合うと、シャロウネはニコッと笑う。
そんなシャロウネに、俺も笑い返した。
「ディー、呼び出してすまなかったね」
伯爵様がそう言って申し訳なさそうにする。
「大丈夫です。それより、何かあったんですか?」
「ディーも知っている通り、シャーネが今年から学院に通うことになる」
そう言う伯爵様に俺は頷く。
貴族には15歳になるとエクレール学院に通うことが義務付けられている。
「一年早いが、ディーにも学院に通って貰うことになった」
「………………は?」
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