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第139話 旅路

三ヶ月はあっという間に過ぎ、俺たちは試験の為に学院に行く日が来た。 俺とシャロウネ、リーナさんとアランとラジールが馬車に乗り込む。 「二人なら大丈夫、頑張ってきなさい」 見送りに来てくれた伯爵様がそう言って俺たちの頬に触れる。 「行ってまいりますわ、お父様」 「父様、行ってきます」 伯爵様に挨拶を済ませると、馬車が出発した。 エクレール学院までは馬車で5日掛かる。 エクレール学院は一つの街になっていて、学院都市と呼ばれている。 エクレール学院は自立を目的としている為、親元から離す目的で創られた学院を中心とした都市だ。 ただし貴族の令息令嬢が集まるため、施設や設備などは貴族仕様になっている。 都市の中にある店なども貴族御用達ばかりだ。 学院には当然、専任のメイドや従者も同行して身の回りの世話をしてくれるし、料理とかも専属のシェフが作ってくれる。 そんな至れり尽くせりの環境で自立になるのかとちょっと疑問に思う。 「ディラント様、大丈夫ですか?」 そうアランが聞いてくる。 「………だい、じょうぶ……」 俺はベッドにうつ伏したまま、そう答えた。 「……いや、全然大丈夫そうには見えないですよ」 アランの呆れ気味の声が聞こえた。 泊まる宿に着くなり、俺はベッドに倒れ込んだ。 今まで数十分程度しか馬車に乗ったことがなかった俺は、長時間乗っていた疲れと、馬車特有の揺れに酔ってしまいダウンしていた。 「馬車に酔うなんて情けないなぁ」 そうラジールが笑い混じりに言う。 実際酔ってしまった俺は、反論する気力も無い。 「はい、ハーブティー。少しはすっきりすると思います」 そう言ってラジールがティーカップをサイドテーブルに置いた。 ハーブティーの良い香りが漂う。 俺は体を起こすと、ハーブティーの入ったカップを手に取った。 馬車酔いの気持ち悪さから何も口にしたくないと思ったけど、俺はハーブティーの香りに惹かれて一口飲んだ。 その瞬間、爽やかなハーブの香りが口一杯に広がって少しだけ気持ち悪さが和らいだ気がした。 「……美味しい」 そう言って俺は息を吐く。 「それは良かった」 ラジールは俺の反応を見て、嬉しそうに笑った。 しかし、まだ後4日もあるのに初日にこれって…… この先、俺の体力持つのかな。 そんな事を考えながらちびちびとハーブティーを飲んでいると、アランとラジールが扉の方に視線を向ける。 その後、トントンと扉がノックされた。 『リーナです。シャロウネお嬢様がお見えです』 扉の外からそう声がする。 アランがこちらに視線を向けて確認する。 俺が答えるように頷くと、アランは少し警戒しながら扉を開けた。

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