144 / 226
第141話 ∥
皆が部屋から出ていって一人になると、俺はベッドに倒れ込んだ。
仰向けに転がって大きく息を吐く。
ラジールの淹れてくれたハーブティーのお陰で大分気分はすっきりしている。
それでも完全ではなかった。
馬車に乗り慣れていないとは言え、ここまで酔うとは思わなかった。
馬車は御者の手腕にもよるけど、馬が引くからスピードがランダムだ。
それもかなりくるけど、一番は道の状態の悪さなんだろうな。
スピードのランダムさと道の悪さが合間って見事に悪酔いした。
学院まではまだ4日は掛かる。
俺の馬車酔いで足止めしてしまっては皆に迷惑が掛かってしまうし、余裕を持って出ては来たけど試験に間に合わなくなる可能性がある。
シャロウネも試験に向けてあれだけ頑張ってきたんだ。
間に合わなくて試験を受けられないなんて事は絶対に避けたい。
酔い止めの薬とかあれば良いんだけどな。
そんな事を考えながら、俺は眠りに着いた。
朝目が覚めると、気分はすっきりしていた。
体を起こしてグッと伸びをする。
窓の外を見ると、青空が広がっていて気持ちの良い晴天だった。
窓の外を眺めていると、扉がノックされた。
返事をすると、アランとラジールが顔を出した。
「おはようございます、ディラント様」
「アラン、おはようございます」
挨拶を返すと、アランが微笑む。
「ディラント様、気分はどうですか?」
「もう大丈夫ですよ」
そう言うと、アランがじっと俺を見てくる。
「顔色も良くなってますね」
しばらく見つめていたアランがそう言って納得したように頷いた。
………俺の言葉は納得出来ないのか。
いや、うんまぁ……その原因を作ったのは俺なんだけど。
「ディラント様、朝食はどうします?」
「……ちょっとだけなら」
「では食堂に向かいましょう。シャロウネお嬢様ももう居ますよ」
そう言うアランに、俺は頷いた。
「そういえばラジールは?」
食堂に向かう途中、ラジールが居ないことが気になった俺はアランに聞いてみる。
「ラジールは出発の準備をしています。用があるなら呼びますよ」
「邪魔しちゃ悪いし大丈夫ですよ」
「そうですか」
そんな会話をしながら食堂に向かう。
食堂に着くと、中にはシャロウネとリーナさんが居た。
「シャーネ、リーナさんおはようございます」
既に席に着いていたシャロウネとリーナさんに挨拶をする。
「ディー、もう大丈夫なんですか?」
そう言ってシャロウネが心配そうにする。
「もう大丈夫ですよ。心配掛けてしまってすいません」
「そう、なら良かったです」
そう言ってシャロウネはホッとしたように息を吐いた。
ともだちにシェアしよう!