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第143話 ∥
しばらくして、俺たちは次の町に向けて出発した。
今日も丸1日、馬車での移動だ。
「……ディラント様、大丈夫ですか?」
アランが心配そうに聞いてくる。
「……すいません」
「ディー、大丈夫ですから横になって。少しは楽になる筈ですわ」
そう言ってシャロウネが俺の肩を押して寝かせようとする。
一度回復したものの、1日やそこらで馬車に慣れるわけもなく、俺はまた馬車酔いでダウンしていた。
……車ではこんなに酔うことなんてなかったのにな。
俺は馬車の座席に横になりながら大きくため息をついた。
どれくらい経ったのか、馬車は止まっていた。
どうやら寝てたみたいだ。
そのお陰か、気分は大分すっきりしている。
「ディラント様、起きましたか」
俺が起きたことに気付いたアランが声を掛けてくる。
「アラン、ここは?」
「次の街までの途中です。次の街まではまだ掛かるので、今はシャロウネお嬢様が外の草原で昼食を取っています」
こういう長旅の場合、目的の街までの間に街があればそこで食事をするけど、ない場合は途中で馬車を止めて弁当を食べる。
「ディラント様はどうされますか?」
そう聞かれて、俺は悩む。
少し回復しているとはいえ、ご飯を食べられるとは思えなかった。
「食事は無理そうですね。お茶だけ貰えますか?」
「ではシャロウネお嬢様の元に行きましょう。外に出れば、気分転換にもなりますよ」
そう言ってアランが微笑む。
「そうですね、行きましょうか」
俺はアランと一緒にシャロウネたちが居る場所に向かった。
少し歩くと開けた場所に出た。
そこではシャロウネが食事をしていた。
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