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第147話 試験

馬車で5日、ようやく学院都市に到着した。 この5日で少しは慣れたみたいで、俺の馬車酔いもだいぶ改善していた。 かといって完成に克服した訳じゃない。 都市に入った俺たちは、そのまま予約していた宿に向かった。 学院では入学すれば寮に入る決まりになってるけど、今はまだ入学前で試験期間中は宿に泊まることになっていた。 「ディラント様、荷物はここに置いておきます」 そう言ってアランが俺の荷物を棚の上に置いた。 「ありがとうございます」 お礼を言うと、アランがニコッと微笑む。 途中、なにか機嫌が悪かったけど今はそうでもないみたいだな。 結局、アランの機嫌が悪くなった原因は分からず仕舞いだったけど…… 「他に何か用はありますか?」 「大丈夫です。長旅でアランも疲れたでしょ?今日はゆっくり休んでください」 そう言うとアランが一瞬驚いた顔をした。 その後突然笑いだした。 「その言葉、そのままディラント様に返しますよ。多少慣れたとはいえ、馬車酔い、完全には克服していないのでしょう?」 そう言ってアランが俺の頬に手を添える。 「ディラント様もゆっくり休んでください。明後日には試験が始まります、万全な状態で挑まなければいけませんよ」 『ね?』とアランが微笑む。 俺はその微笑みに思わず息を飲んだ。 「そ、そうですね、俺も休ませてもらいます」 咄嗟に顔を逸らすと、アランからクスクスと笑い声が聞こえてくる。 「では、俺たちはこれで失礼します。何かあったら呼んでください」 そう言うと、アランは部屋を出ていった。 アランが部屋から出ていくと、一気に体の力が抜けた。 び、びっくりしたぁ! なに、あの絵顔!? アランは攻略対象だけあって、かなり顔が良い。 それにハイスペックで気遣いも完璧だ。 それは男の俺でも、思わずドキッとしてしまう程。 あんな笑顔見せられたら、女だったらイチコロなんだろうな。 そう思って、俺はため息をついて天を仰いだ。

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