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第148話 ∥

休もうとベッドに入ったものの、なかなか寝付けなかった。 ………駄目だ、眠れない! 俺はベッドを出て部屋の外の様子を伺った。 いつもなら騎士が部屋の前に立って警護してるけど、ここはもう学院都市内で治安は悪くない。 それにこの宿は防犯がしっかりしている。 その為、部屋の前に騎士は居なかった。 俺は物音を立てないようにそっと部屋を出た。 灯りが落とされて薄暗い廊下を壁伝いに歩く。 ……今日は月が明るいから灯りがついてなくても大丈夫そうだな。 等間隔にある窓から月明かりが入ってきて廊下を照らしてる。 そのお陰で灯りがついてなくてもなんとか見えていた。 俺は宿の中庭に出た。 軽く準備運動をしてから武術の型を一通り通す。 型を一通りやると、体が温まってきた。 ……うーん、やっぱり物足りないな。 最近はずっとルオを相手にしてたから、型だけだとどうしても物足りなく感じてしまう。 かと言ってこんな夜更けに誰かに頼むことも出来ない。 「俺が相手をしようか?」 どうしようかと悩んでいると後ろからそう声がする。 見るとラジールが立っていた。 「ラジール、どうしてここに?」 「どうしたもこうしたも、ディラントが外に出ていくのが見えたから追ってきたんだよ」 見つからないように出てきたつもりだったけど、ラジールには気付かれちゃったのか。 「すいません、眠れなくて」 そう言うと、ラジールがフッと笑う。 「気にすることはない、敷地外に出るなら止めたけどそうじゃなかったからな」 『それより』とラジールが続ける。 「その様子じゃ型だけじゃ物足りないんじゃないか?」 どうやらラジールは俺が型を通すところをずっと見てたらしい。 「最近はずっとルオに相手をしてもらってたので……」 「だから俺が相手をしてやるよ、まぁ俺じゃルオの代わりにはならないかもしれないけどな」 そう言ってラジールはパチッとウインクをして笑った。 俺は言葉に甘えてラジールに相手をしてもらうことにした。 お互いに距離をとって構える。 その瞬間、ラジールからピリピリとした空気を感じる。 今、目の前に居るのはいつものワンコなラジールじゃない。 この気迫、猛獣って感じだ。 そのピリつく空気に、俺も自然と気が引き締まった。

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