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第151話 ∥

校舎内に入ると、受付を済ませる。 そこで試験会場となる教室の書かれた用紙を受け取った。 受付に居た人とは別の人が教室まで案内してくれていた。 普段は校内まで従者がついて来られるらしいけど、今は試験中ということで生徒以外の人は立ち入り禁止となっていて、アランとラジール、リーナさんは外で待機している。 シャロウネと教室が分かれちゃったな。 さすがにこんな広い校舎、案内無しだったら迷ってたな。 俺は校舎内に視線を向けながら案内人の後に続いた。 「こちらの教室が試験会場になります」 案内してくれた人が目の前の教室を示す。 「ありがとうございます」 そう言うと、案内してくれた人が一瞬驚いた表情をした。 その後何も無かったように頭を下げて去っていった。 ……何だったんだろう。 俺は案内人が何故驚いたのか分からなくて首を傾げた。 考えても仕方ないと思って、俺は気を取り直しで教室の扉に手を掛けた。 「ディラント」 扉を開けようとした時、後ろから呼ばれた。 見ると、そこには金髪橙眼の男の人が立っていた。 「ディラント・グロウで間違いないな?」 そう聞かれて、俺は胸に手を当てて頭を下げた。 「……お久し振りです。リオネス皇太子殿下」 「あぁ、久し振りだな」 リオネスに会ったのはシャロウネのデビュタントの時。 悪ふざけをするリオネスに俺がキレた。 それ以来俺は社交の場に顔を出してないから、リオネスに会うのは5年ぶりだ。 俺はリオネスをチラッと見る。 見た目はイノラバに出てくるリオネスのスチルそのもの。 洗礼されて、どこから見ても王子様って感じだ。 噂ではデビュタントのパーティー後からリオネスが変わったと聞いた。 ふざける事しなくなり、勉学にも真面目に取り組むようになったらしい。 そのお陰もあって、11歳のリオネスの誕生日パーティーでリオネスが皇太子に立太子した。 何が切っ掛けなのか分からないけど、リオネスが良い方向に変わってくれて良かったと思う。 「殿下、そろそろお時間です」 リオネスの後ろに居た人がそう言う。 ロンド・オルゼーク 銀髪翠眼でどちらかと言ったら美人。 リオネスとは幼馴染みで次期宰相候補と言われている。 そして、イノラバの攻略対象。 「……そうか」 リオネスがロンドに頷く。 その後、もう一度俺を見た。 「……試験、頑張って」 「ありがとうございます」 そう言って頭を下げると、リオネスは教室に入っていった。 リオネスの後に続いてロンドが俺の横をすり抜けていく。 その時ロンドに睨まれた気がした。

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