160 / 226

第157話 ∥

『頭を上げてください』と言うと、リオネスは恐る恐る頭を上げた。 その表情が少し可愛らしく見えて、思わず笑ってしまった。 笑っている俺をリオネスが不思議そうに見てきた。 「殿下に謝られたら、許さない訳いかないですね」 俺がそう言うと、リオネスが怪訝そうな表情を見せる。 「……それは私が王族だからか?」 ……そうか、リオネスは自分が王族だから"仕方なく"許されたと思ったのか。 「違いますよ」 そう言って、俺はいまだに立ちっぱなしのリオネスをベンチに座るように促した。 「お……私は殿下が頑張っていたことを知っています」 いくら公式の場ではないとはいえ、王太子相手に普通に喋るのはまずいと思って、俺は少し言葉を正した。 そうするとそれを察したのか、リオネスの表情が曇る。 「……出来れば普通に話してくれると有難い」 リオネスが俯き気味に言う。 それにも思わず笑ってしまった。 「解りました、普通にですね。でしたら、殿下も普通に話してください」 「……私はこれが普通だ」 イノラバの公式設定にリオネスは『普段は王太子らしく振る舞っている』と書いてあったのを見たことがある。 『普段は』という事は、それ以外は違うということだ。 「では私も変える事は出来ません」 「なっ!?それはずるいぞ!」 「殿下が態度を変えないというのに、伯爵家の令息風情が砕けた態度を取るなんて、そんな恐れ多い事は出来ません」 チラッとリオネスを見ると、まだ葛藤してるみたいだった。 「……殿下、ここは王宮ではありません。それにここには"俺たち"しか居ない。少しくらい肩の力を抜いても誰も文句は言いませんよ」 そう言って笑って見せるとリオネスは驚いた表情の後苦笑を漏らした。 「……そうだな」

ともだちにシェアしよう!