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第159話 ∥

リオネスに『大切な人を亡くしたのか』と聞かれたとき、答えることが出来なかった。 それに亡くしたのは俺じゃない。 だって死んだのは"俺"だから…… 今でも、たまに友華に会いたくなる。 会いたくなってそれが叶わない時、無性に寂しくなる。 でもそんな時は伯爵様やシャロウネが気付いて傍に居てくれる。 本当は俺から『傍に居て欲しい』と言えれば良いんだろうけど、"俺自身"の年齢を考えるとそれは出来ない。 「そういえば、今日の座学はどうだった?」 リオネスが突拍子も無く聞いてくる。 俺は突然過ぎるその質問に答えることが出来なくてリオネスを見つめた。 リオネスを見ると、優しく微笑む。 ……あ、これは…察して話題を変えてくれたんだ。 リオネスの気遣いが解ると、俺は少し嬉しくなった。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (リオネスside) ディラントが大切な人を亡くした事は、ディラントの表情から確信した。 その後もディラントの表情がどんどん曇っていく。 僕はこの話は続けるものじゃないと判断して話題を変えた。 『どんなに会いたくても、もう会う事は出来ない』 ディラントは、どんな気持ちでこの言葉を言ったのだろう。 その気持ちは、僕には解らない。 でも出来れば、ディラントには笑顔で居て欲しいと思う。 ……出来れば、その笑顔を僕に向けて欲しい。 『座学はどうだった?』と聞いたのはあくまで話題を変えるための口実。 話題を変える口実があって良かったと思う。 ディラントには僕の思惑はバレてるみたいだけど…… 「座学は出来ていると思います」 ディラントがクスッと笑いながら答えてくれる。 「グロウ伯爵からディラントは優秀だと聞いている」 王宮で自慢して回っていると伝えると、ディラントが呆れたような表情をする。 「父様は一体何を……」 そう言ってディラントはため息をついた。 僕はその様子に思わず笑ってしまった。 「伯爵も周囲に知って欲しいのだろう」 「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいです」 そう言ってディラントは少し頬を赤らめる。 「優秀な子を持つ親は自慢するものだ。ディラントの事もだが、シャロウネ嬢の事もよく耳にする」 「もう、本当勘弁して欲しい」 そう言ってディラントは顔を手で隠した。 その様子にも笑ってしまった。

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