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第160話 ∥

伯爵様は親バカだと思っていたけど、シャロウネの事はまだしも、俺の事まで自慢して回るなんて恥ずかしすぎる。 そんな事を考えていると、隣からクスクスと笑い声が聞こえてくる。 「……何を笑ってるんですか」 「……いや、すまない」 そう言いつつもリオネスは笑い続けた。 リオネスと色々話をしていると、校舎からカランカランと鐘の音が聞こえてきた。 「……もうそんな時間か」 鐘の音を聞いて、リオネスがボソッと呟く。 さっきの鐘の音は学院の門を閉める合図らしい。 この世界にも下校時刻があるのかと、少し驚いた。 「戻らないとな」 とリオネスがどこか名残惜しそうに言う。 俺も、リオネスと話をするのは楽しかったからちょっと残念に思う。 「皆を結構待たせちゃいましたね」 「そうだな」 俺たちは取り敢えず皆の元に戻ることにした。 別れ際、リオネスが手を差し伸べてきた。 俺は一瞬、その手の意味が解らなくてリオネスを見た。 「これからは同じ学院の生徒だ。ディラントとは良い関係を築きたい」 俺は漸く差し伸べられた手の意味が解った。 「はいこちらこそ、これからよろしくお願いします」 そう言って、俺はリオネスの手を握った。 「あぁ、よろしく頼む」 ・・・・・・・・・・・・・・ リオネスとまともに話したのは今回が初めてだったけど、ゲームの印象とは違った。 王太子としての体面は保ちつつも、年相応の反応をする場面もあった。 俺はその場面を思い出して、自然と笑みが漏れる。 「ちゃんと話が出来たみたいですわね」 馬車の中でシャロウネがそう言う。 「はい、殿下からの謝罪を受けました」 そう笑顔で答えると、シャロウネも笑ってくれた。 ロンドの方は更に拗れちゃったかな。 別れ際にまた睨んできたし…… ロンドは俺とリオネスが親しくするのが気に入らないんだろうな。 まぁ色々と問題はありそうだけど、楽しい学院生活が送れそうだ。 そう思って、俺は学院の校舎に視線を向けた。

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