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第161話 ヒロインの影

俺は盛大にため息をついた。 その様子を見て、皆が戸惑っているのが分かる。 「……ディー、きっと大丈夫ですわ」 シャロウネが慰めるように声を掛けてくる。 今の俺には、その言葉を受け入れる余裕はなかった。 エクレール学院の試験は無事3日間の日程を終えた。 後は2日後の順位発表を待つだけだった。 「……ディラント様、きっと大丈夫ですよ」 そう言ってアランが引き吊った笑顔を見せる。 「…そ、そうだ。ディラントは頑張っていた」 とラジールも珍しく励ましてくれてるみたいだ。 励ましてくれるのは嬉しいけど、今の俺にはその励ましが反って気を重くした。 試験は無事終わった。 結果を言えば、座学は割かし出来てると思う。 でも魔法と剣術が散々だった。 魔法は得意な魔法で的を射抜くというもの。 周りの受験生たちは次々と的を射抜いていった。 俺はというと、普通に魔法を放っても的に届かない。 火魔法を風魔法で後押しして何とか的に当てたけど、本当に当てただけ。 剣術に至っては、案の定相手に当てる事が出来ずに、最終的に体術で捩じ伏せた。 魔法は兎も角、"剣術の試験"で体術で相手を倒すって……一番やっちゃダメなやつだろ。 そう思って、俺は顔を押さえてため息をついた。 皆の期待に応えたかったけど、今回ばかりは無理かもしれない。 Sクラスは無理でも、伯爵様の為にもせめてAクラスくらいには…… 「もう!いつまで落ち込んでますの!」 俺がグルグルとそんな事を考えていると、シャロウネが突然叫んだ。 その声に思わず体が揺れた。 「終わってしまった事をいつまで考えてても仕方ありませんわ!後は結果を受け止めるだけですわ!」 そう言ってシャロウネが指を突き付ける。 俺は驚いたものの、シャロウネのあまりの潔さに笑ってしまった。 「ははっ、シャーネはカッコいいなぁ。……そうですね、終わった事を考えてても仕方ないですね」 「そうですわ! と言うわけで、今から街に行きますわよ!」 そう言ってシャロウネがぱんっと手を叩く。 「は!?今からですか!?」 シャロウネの言葉に皆も驚いている。 どうやら完全に思い付きのようだ。 「部屋に籠っていたら、ディーはまた考え込んでしまうでしょう?こういう時は遊んだ方が気晴らしにもなりますわ!」 そう言ってシャロウネはニコッと笑う。 そんなシャロウネに思わず笑ってしまった。 「そうですね、行きましょうか」 街に遊びに行くと決めた俺たちは、早速準備して街に向かった。

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