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第166話 ∥
(シャロウネside)
ディーが学院の人に呼ばれて行ってしまった。
私もリーナたちの所に戻ろうとすると、突然手を掴まれた。
「シャロウネ嬢、申し訳ない少し話を良いだろうか」
殿下の表情を見ると、とても真剣な眼差しをしている。
……どんな内容なのか、分かりやすいですわね。
それに伺いを立てた言い方でも、一介の伯爵令嬢に王太子殿下からの申し入れは断れない。
「分かりましたわ。ここでは目立ち過ぎるので場所を移動いたしませんか?」
そう言うと、殿下が周りに意識を向ける。
「そうだな。少し歩いた所にテラスがあった筈だ、そこで如何だろう?」
「構いませんわ。……それと、ひとつ宜しいでしょうか」
そう聞くと、殿下は『何か?』とでも言うように首を傾げる。
私は自身の手に視線を向けた。
「いくら慌てていたからといって、令嬢の手を無闇に掴むものではありませんわ」
そう言うと、殿下はハッとして慌て私の手を離した。
「す、すまない。慌てていたとはいえ、失礼した。……手首を痛めていないだろうか」
そう言って殿下は私の手を気に掛けてくれた。
「心配要りませんわ」
「そうか……」
殿下は安心したようにホッと息を吐いた。
幼少期の殿下は我が儘で傲慢だと言われていた。
王子という立場を利用して自分の思い通りに事を進めようとする。
思い通りにならなければ周りに八つ当たりをすることも珍しくなかった。
その為、あまり良い噂は聞かなかった。
でもいつ頃からか、人が変わったようになったと聞いた。
我が儘で傲慢だった時とは打って変わって、勉学に励み、気遣いも出来るようになった。
その変わりように最初は皆も戸惑っていたけど、いつしかそれが受け入れられて次の誕生パーティーで王太子に立太された。
でも何が切っ掛けにで変わられたのかは誰にも分からないらしい。
「従者を連れて参ります、少々お待ち頂いて宜しいでしょうか」
そう聞くと、殿下が頷く。
私はリーナたちに殿下と一緒する事を伝える為と、アランに付き添って貰うために皆の元に向かった。
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