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第167話 ∥
(シャロウネsside)
「分かりました、では私たちはこちらで待機していますね」
リーナに殿下と話をするから少し離れる事を伝える。
「ではアラン、宜しくお願いいたしますね」
「畏まりました」
そう言ってアランが胸に手を当てた。
本来、ディーの従者であるアランを勝手に連れていく事は良くない事。
リーナが居るにも関わらずアランを連れていくのは理由がある。
令嬢は普段婚約者以外の男性と二人きりになることを避ける。
しかしやむ終えない場合、相手に好意が無いという意思表示で異性の従者を連れていく事が暗黙のルールになっていた。
アランを選んだのは、ラジールでは私に着いては来てくれないと思ったから。
ラジールはディーを主としている。
ディーの手前、私の言う事も聞いてはくれているけど、それはあくまでディーがそれを望んでいるから。
そうでなければラジールは私の事など見向きもしない。
ラジールはその区別がはっきりしている。
アランもディー優先ではあるけど、幼い頃から一緒に居ることもあって私の事もちゃんと見てくれている。
「お待たせ致しました。では参りましょうか」
アランと一緒に殿下が待ってくれている場所に行く。
「あぁ」
私とアランは殿下に導かれてテラスに向かった。
学院のテラスにはいくつもの椅子とテーブルが設置されている。
殿下が椅子を引いて座るように促した。
……王太子殿下に椅子を引いて頂くなんて、そうそう経験出来るものではありませんわね。
「ありがとうございます」
そう言って椅子に座る。
殿下も向かいに座った。
「時間を作って貰って感謝する」
「いえ、それで話というのは?」
私がそう聞くと、殿下が少し視線を下げる。
「…ディラントの事だ」
……やっぱり。
「先日、ディラントと話をした」
「ディラント本人から聞き及んでおります」
「その中で少し気になる事があった」
「…気になる事?」
下を向いていた殿下の視線が私を捉える。
「ディラントは誰か大切な人を亡くしているのか?」
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