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第170話 ∥

起きた俺は、アランから伯爵様たちが食堂で待ってると聞いて急いで仕度をした。 仕度を終えた俺とアランは一緒に食堂に向かった。 「ディラント様、大丈夫ですか?」 アランが心配そうに聞いてくる。 「もう大丈夫ですよ」 そう答えると、アランがまじまじと俺の顔を見てくる。 その後、納得したのか小さく息を吐いた。 食堂に着くと、顔を合わせるなり『大丈夫か』と皆に聞かれた。 俺が大丈夫だと答えると、揃いも揃ってアランと同じような反応をした。 しっかり休んで体調は回復しているから大丈夫だと答えたのに、信用して貰えないなんて…… まぁ今までの俺の行動を考えると、身から出た錆なんだろうけど。 席に着くと、まず食べられそうかどうかを確認された。 俺は少しならと思って食事を持って来てくれるように給仕に頼んだ。 伯爵様とシャロウネの前には肉料理などの豪華な食事が並ぶ。 俺の前にはスープと小さめのおにぎりが2つ置かれた。 端から見たらこの格差は何だと思うけど、俺にはこれで十分。 むしろおにぎりを出してくれたことが嬉しい。 幼い頃に料理長たちに米の炊き方を教えて、その後もたまにリクエストしていた事で俺は炊いた米が好きだと思われたらしい。 実際、米は好きだ。 このおにぎりも元は俺が教えたものだけど、今では料理長たちが試行錯誤してより良いものになっていた。 「ディーはおにぎりだとよく食べるね」 おにぎりを頬張っていると伯爵様にそう言われる。 俺は自分の食べているおにぎりに視線を向けた。 俺の手にあるのは子供サイズの小さなおにぎり。 量的にはそんなに食べてる感はない。 ……けど。 「料理人たちが俺の為に作ってくれたものですから」 この世界の料理はフレンチ系の料理が基本だ。 主食はパンで米は殆ど出てこない。 でもこうしておにぎりが出されるってことは、わざわざ俺の分だけ作ってくれたことになる。 そんな料理を残すわけにはいかない。 俺の為に少量作るなんて手間でしかないのに、本当料理長たちには感謝しかないな。

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