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第173話 ∥
時間はあっという間に過ぎて、俺たちが学院に戻る日がきた。
「じゃあ二人とも、私も後で学院に向かうからね」
「お父様、お待ちしていますわ」
そう言ってシャロウネが微笑む。
「ディー、シャーネを頼むよ」
「任せてください」
「お父様!何故ディーに言うのですか?私がディーを任されるのですわ!」
そう言って怒るシャロウネに伯爵様がクスクスと笑う。
「そうだったね。シャーネもディーを頼んだよ」
「お任せくださいませ」
そう言って胸を張るシャロウネに、俺は密かに笑ってしまった。
「ディラント様、出発の準備が出来ました」
伯爵様とシャロウネとそんな話をしていると、出発の準備をしてくれていたラジールが声を掛けてきた。
「ありがとうございます」
俺とシャロウネはラジールに促されて馬車に乗り込んだ。
「じゃあ二人とも、気を付けてね」
そう言って伯爵様が俺とシャロウネの頬に触れた。
「はい、お父様。行ってまいります」
「父様、行ってきます」
挨拶を済ませると、俺たちは伯爵様に見送られて再びエクレール学院に向かった。
今回の旅のメンバーは俺とシャロウネ、ラジールに護衛でフラルさんとレオンさんが動向する。
アランとリーナさんは俺たちが使う寮の部屋の準備で先行していた。
普段シャロウネの世話をするリーナさんが不在の為、伯爵様が俺にシャロウネの事を頼んできた。
シャロウネはその事が不服らしいけど……
学院では、これから色々なイベントが発生する。
イベントはヒロインが誰のルートに入るかで変わってくるから、どんなイベントが発生するかは俺にも予測出来ない。
俺はシャロウネに視線を向けた。
シャロウネも視線に気付いたのか、俺を見て首を傾げた。
ただ俺の存在がどう影響してくるか分からない。
俺だけならイベントで何が起きても対処は出来る。
シャロウネに被害が無ければそれで良い。
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