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第177話 ∥

あの後俺は、一触即発の雰囲気を醸し出す二人を宥めるのに必死だった。 二人が落ち着いた事を確認すると、俺はアランが準備してくれたお風呂に入った。 部屋について直ぐアランが消えたのは、お風呂の準備をしてくれていたからだったみたいだ。 俺は昨日の事を思い出して苦笑が漏れた。 「ディー、着終えましたか?」 扉の外からシャロウネの声がする。 「はい、今行きます」 そう返事をして、俺は部屋を出た。 俺とシャロウネは明後日に控えた入学式に向けて、制服の最終調整に来ていた。 「ディー、とても素敵ですわ!」 制服姿の俺を見てシャロウネがはしゃぐ。 「シャーネも似合ってますよ」 エクレール学院の制服は白と黒を基調としている。 女子はワンピースに腰丈のジャケット。 ジャケットには袖と脇下に黒いラインが入っている。 スカートにもサイドに黒いラインが入っていて、中央にはスリットが入っていてフリルが現れている。 スカートはAラインになっていて、動く度に裾がふわりと動いてシンプルなデザインでも優雅に見せている。 男子はジャケットは膝上丈で、動きやすいように前が開くようになっている。 デザインは女子と一緒で、袖と脇下に黒いラインが入っている。 ズボンには裾に黒が入っているだけで、女子よりかなりシンプルなデザインになっていた。 「ディーは黒も似合いますけど、白も髪と瞳の色が映えて良いですわね」 とシャロウネがまじまじと俺を見てニヤリと笑う。 俺はその笑顔に身の危険を感じて、思わず後退ってしまった。 盛り上がるシャロウネとリーナさんから逃げるように、俺は試着室に戻った。 試着室に入って、ふと鏡に映るディラントの姿に気付いた。 ……まさか"俺"がこの制服を着る事になるとは思わなかった。 ディラントの姿が映る鏡にそっと触れる。 ていうか、"俺"が制服って…… 精神的ダメージ半端ないんだけど!? え、"俺"が制服って本当に大丈夫なのか!? "俺"、もうアラサーなんだけど!? そんな事をグルグルと考えていると、俺の異変に気付いた店の人に心配されてしまった。 今さら嘆いても仕方ないか。 姿はディラントだから、制服を着ていても違和感はない。 だから大丈夫。 そう自分に言い聞かせて、俺は気を取り直して伯爵様と合流するために早々に店を出た。

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