182 / 226

第179話 ∥

その日は伯爵様たちと一緒に食事をしたり、話をしたりと過ごした。 次の日は入学式の新入生挨拶の再度の確認と段取りの確認などで俺だけ忙しくしていた。 ー入学式当日ー 鏡を前に大きいため息が出た。 やっぱり違和感が半端ないな…… 鏡に写った制服姿に、またため息が出た。 「ディラント様、お時間ですよ」 アランが懐中時計を見ながら急げと催促してくる。 アランに時計を見せて貰うと、約束の時間を回るところで、俺は慌てて部屋を出た。 寮を出ると、すでにシャロウネが乗った馬車が待っていた。 俺は急いで馬車に駆け寄った。 「リーナさん、おはようございます」 「おはようございます、ディラント様」 そう言いながら、リーナさんが馬車の扉を開けてくれる。 「シャーネ、待たせてしまってすいません」 俺は馬車に乗り込みながらシャロウネに謝る。 そんな俺に、シャロウネはニッコリと微笑んだ。 「大丈夫ですわ。今着いたところですし、待ってはいませんわ」 そう言いながら、シャロウネがじっと見てくる。 そんなシャロウネに俺は首を傾げた。 「……変ですか?」 やっぱり"俺"が制服っておかしいんだろうか。 「そんな事ありませんわ、とても似合ってますよ」 そう言ってシャロウネはニッコリと笑う。 「……これでは益々気が抜けませんわ」 シャロウネが何かボソッと呟く。 「え?」 聞き取れなくて聞き返すと、シャロウネが綺麗な笑顔を見せた。 「何でもありませんわ」 そう言って笑うシャロウネに『これ以上聞くな』という強い思考が見えて、俺はそれ以上聞くことを止めた。

ともだちにシェアしよう!