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第182話 ∥

寮に戻ると、早速パーティーの準備に取り掛かった。 お風呂に入り、髪の毛をセットする。 その後、シャロウネに選んで貰った衣装に袖を通した。 服を着終えた後、小物を身に付けてアランに最終チェックをして貰った。 「流石お嬢様の選んだ衣装ですね。とても似合ってますよ」 そう言ってアランが微笑む。 「……ありがとうございます」 ……面と向かって言われると照れるな。 今着ている服はここに来る前にシャロウネに選んで貰ったもの。 色はネイビーで襟から裾にかけてと、袖に金糸の刺繍が入っている。 "ディラント"の髪と瞳の色が映えるようにだそうだ。 ちなみにテーマは『夜空』らしい。 「ディラント、香水はこれで」 アランとそんなやり取りをしていると、ラジールが香水の瓶を持って俺とアランの間に入ってきた。 その表情には何故かただならぬものを感じた。 「あ、ありがとうございます」 そう言ってラジールから香水を受け取ると、軽く振り掛けた。 その瞬間、フワリと柑橘系の良い香りが広がる。 俺好みの香りだ。 「……とても良い香りですね」 俺はキツい香りの香水が苦手だ。 甘い香りは気持ちが悪くなるし、色々な香りが混ざっている人工的な香りは頭が痛くなってくる。 でも香水は貴族の嗜みでもあって、外に出る時は必ず付けるものだ。 いつもラジールが香水を選んでくれるけど、俺が苦手な香りを選ぶことはない。 キツい香りが苦手ということは公言したことは無いけど、ラジールは気付いていたっぽい。 俺がお礼を言うと、ラジールは嬉しそうに笑う。 さっきはラジールからただならぬものを感じたけど、今はそれが全く感じれない。 俺はその様子にホッと息を吐いた。 「ディラント様、そろそろお嬢様を迎えに行く時間では?」 アランにそう言われ時計を確認すると、約束の時間までかなりギリギリだった。 いくら学校行事とはいえ、貴族が集まるれっきとした社交の場だ。 遅刻なんてあり得ない。 そう思って俺は急いで支度を終えると、シャロウネを迎えるべく、女子寮に向かった。

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