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第185話 ∥
パーティー会場に着くと、シャロウネと一緒に入場する。
中には既に結構な人が集まっていて、扉は開く音で一斉にこちらを向いた。
注目を浴びるのは、やっぱり慣れないな。
そんな事を考えていると、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「やっぱりディーは目立ちますわね」
そう言ってシャロウネは何故か嬉しそうに笑う。
「…目立っているのはシャーネの方だと思いますよ」
そう言うと、何故かため息をつかれた。
「分かってませんわね。皆ディーを見てるのですよ」
「……俺なんかを見てどうするんですか?」
そう言うと、またため息をつかれた。
そんなやり取りをしていると、パーティーの開催時間になる。
学院長が開催の挨拶を述べる。
それを合図に各々動き出した。
最初は生徒同士の親睦を深めるためにそれぞれ挨拶を交わす。
俺とシャロウネはそれには参加せず、隅の方で用意されていた軽食を食べていた。
俺はシャロウネの為にスイーツやドリンクをテーブルまで運ぶ。
その間も何故かチラチラと見られてる気がした。
その事をシャロウネに話すと、呆れたようにため息をつかれた。
「失礼致します。ディラント・グロウ様とシャロウネ・グロウ様ですね?」
シャロウネと一緒にスイーツを楽しんでいると、パーティーの給仕に声を掛けられた。
「ファーストダンスのお時間となりました。ホール中央までお越しください」
そう言って給仕はホール中央を手で示す。
それを聞いて、シャロウネは目を輝かせ、俺は気落ちした。
「ディー、そんな顔しないで。さぁ行きますわよ」
シャロウネは気落ちしている俺をクスクスと笑いながら言う。
俺は一度ため息をつくと、心を決めてシャロウネに手を差し伸べた。
見ると中央までは既に道が出来ていて、中央にはダンスをするスペースが作られてその周りを皆が囲んでいる。
この中で踊るのかと思うと、気が滅入って仕方ない。
この学院では一位を取った者が歓迎パーティーのファーストダンス、つまり最初のダンスを踊る決まりになっている。
それは一位を取った者が誰なのかを知らしめる為らしい。
地位や名誉を気にする貴族ならそうやって目立つことは喜ばしい事なんだろうけど、そんな事はどうでも良い俺にとっては罰ゲームの何ものでもない。
本当はやりたくないけど、やるからには失敗は許されない。
そう思って、俺は小さく気合いを入れた。
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