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第187話 ∥
「ありがとうございました」
俺の手を引くリオネスにお礼を言う。
「困っているみたいだったからね」
「助かりました。正直、どう断ろうかと思っていたんです」
「そうか、助けられて良かった」
そう言ってリオネスは笑った。
手を引かれて連れてこられたのは、会場の端っこ。
リオネスが近寄りがたいのか、注目されてはいるものの、近寄ってくる人は居なかった。
「ロンド、待たせてしまってすまない」
リオネスに連れてこられた場所にはロンドが居た。
「いえ、大丈夫です」
ロンドと一言二言話したリオネスが、今度は俺の方を見る。
「そういえば、ディラントには紹介していなかったな。彼はロンド・オルゼーク、私の友人だ」
リオネスに紹介されてロンドを見ると、ロンドと目が合う。
「…ディラント・グロウです」
俺が名乗ると、ロンドは軽く頭を下げた。
そのロンドが何かじっと見つめる。
何を見てるんだろうとロンドの目線を追うと、俺たちの手元に行き着いた。
見ると、俺の手はリオネスにしっかりと掴まれていた。
しまった、すっかり忘れてた。
「殿下、もう大丈夫なので手を離してください」
そう言うとリオネスも忘れていたようで、視線を手元に移す。
リオネスはしばらくその手を凝視した。
「……殿下?」
「……あ、すまない」
そう言ってリオネスは俺の手を離した。
そんな俺たちの見て、ロンドが小さくため息をついた。
「殿下、申し訳ありませんが、私は一度退席させて頂きます」
ロンドはリオネスにそう断りをいれると去っていった。
ロンドは俺とすれ違う瞬間、スッと目を細めて見下ろした。
最初からそうだった。
試験で初めて会った時も睨まれた。
その後も顔を会わせる度に睨んでくる。
「……嫌われてるのかな」
ロンドに何かしたつもりは無いんだけどな。
「ロンドは別にディラントの事を嫌っている訳じゃないぞ?」
「え?」
リオネスの言葉に思わず声が出る
「ロンドは人を観察するのが癖なんだ。それにあの通り目付きが悪いから、昔からよく誤解されるんだ」
そう言ってリオネスはロンドが去っていった方を見る。
ゲームのスチルで出てきたロンドは優しく微笑む描写が多かった。
でもよくよく考えてみれば、それは好きな相手に向ける表情で、誰にでもあんな表情をする訳じゃない。
「殿下はロンド様の事をよく解っているんですね」
「ロンドとは幼い時からの付き合いだからな」
リオネスの言葉に、俺はふとあの時のパーティーを思い出した。
そういえば、あの時も近くにロンドが居たような……
「……デビュタントのパーティーの時にも一緒に居ましたよね?」
そう聞くと、リオネスがバツの悪そうな顔をする。
「……出来ればその話はしないで貰えると有難い」
どうやら、リオネスにとってはあの時の出来事は黒歴史らしい。
あまりにも居心地悪そうにしているリオネスを見て、俺は思わず笑ってしまった。
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