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第188話 ∥

俺はリオネスとしばらく他愛ない話をした。 リオネスと話しているのは楽しいしと思うけど、さすがに疲れてきた。 リオネスにではなく、周りにだけど…… 皇太子であるリオネスと一緒にいる俺は他の人たちから注目の的になっていた。 チラチラと見てくる視線も気になるし、時々耳に入ってくる『殿下』と『グロウ家』という単語。 内容は聞こえないけど、グロウ家が出てくるとなるとどうしても気になってしまう。 後は人口密度の高さだ。 パーティー会場は俺の世界でいうドームのグラウンドくらいの広さはある。 広さとしては十分過ぎるほどだけど、そこに新入生、在校生、学院関係者、給仕にメイドが一同に集まっている。 広さは十分でも、それだけの人数が集まればそれなりに圧迫感を感じる。 そんな事を考えて、俺は小さく息を吐いた。 「ディラント、少しバルコニーに行こうか」 リオネスが突然そんな事を言って俺の手を掴む。 俺はされるがままバルコニーまで引っ張っていかれた。 バルコニーに出ると中の音は聞こえるものの、窓ガラスに遮られて煩わしかった声が聞こえなくなる。 少し広めのバルコニーには俺たちしか居なくて、さっきまでの圧迫感が嘘のようだ。 俺はその解放感にホッと息を吐いた。 「……殿下、どうしてここに?」 「ディラントが疲れているように見えてね。ここなら静かで人も居ないし良いかと思ったんだ」 ……リオネスは俺の為に? 「……ありがとうございます」 俺がお礼を言うと、リオネスはとても綺麗に微笑んだ。 その笑顔が輝いて見えて、俺は思わず顔を背けてしまった。 さすが乙女ゲームのメイン攻略対象! 笑顔の破壊力が半端ない! 俺は気を紛らわす為に空を見上げた。 ……そういえば、こっちに来てからは空を見るなんてしなかったな。 この世界は光はあるものの、俺の世界みたいに煌々としていない。 夜の光も差程妨げになってないから星がよく見える。 ……そういえば、友華も星を見るのが好きだったな。 小学校で星座を習ってからはよく星を見に行って、あれが何座でなんて教えて貰ったっけ…… 俺は当時の事を思い出してふっと笑う。 俺はもう一度空を見上げた。 空には無数の星が輝いているのに、俺が知る星の並びは見当たらない。 俺はそれが無性に寂しく感じた。 その瞬間、突然手を掴まれた。

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