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第190話 ∥

「名残惜しいけど、そろそろディラントをシャロウネ嬢に返さなくてはいけないな」 『もっと話をしたかった』とリオネスが言う。 「同じクラスなんです、これからはいくらでも話をする機会はありますよ」 「……そうか……そうだな」 そう言って嬉しそうに笑うリオネスに、俺も釣られて笑った。 しばらくするとロンドがリオネスを迎えにきた。 その時、また睨まれた。 リオネスには、ロンドは俺の事を嫌ってないと言ってたけど、本当のところはどうなんだろう。 「ディー!漸く見つけましたわ!」 そんな事を考えていると、シャロウネがきた。 どうやら探させてしまったらしい。 「すいません、殿下と一緒だったので…」 「分かっていますわ。でも会場には居なかったですわよね?」 「あぁ、バルコニーに居ました」 そう言うと、シャロウネが驚いた表情を見せる。 「バルコニー、ですか?」 「はい、殿下が会場の雰囲気に疲れてしまった俺を気遣って、人の居ない所に連れていってくれたんです」 「その時、もちろんロンド様も居らしていたのですよね? ……まさか二人きりなんてことはありませんわよね?」 そう鬼気迫る感じで聞かれて、俺は思わず引いてしまった。 「……ロンド様は用があったみたいで、別行動でしたけど……」 「…………て事は…人気のない場所で二人きりだったって事ですのね?」 シャロウネはそう呟くと、俯いてしまう。 「……シャ、シャーネ?」 シャロウネの行動が心配になった俺は、俯いてしまったシャロウネを覗き込んだ。 その瞬間突然肩を掴まれて、驚いて思わず体が跳ねた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (シャロウネside) 迂闊でしたわ!  まさか殿下がディーを連れ込むなんて思ってもみませんでしたわ! 「殿下に何かされませんでしたわよね!?」 そう聞くと、ディーはきょとんとする。 「……何かって、何ですか?」 そう言ってディーは首を傾げる。 「……バルコニーに連れていかれたのですよね?」 そう聞くと、ディーが頷く。 「……二人きりだったのですよね?」 またディーが頷く。 「……何もなかったのですか?」 そう聞くと、ディーは首を傾げた。 ……これは、本当に意味が解っていない? 殿下がディーに好意を持たれているのは確か。 そんな相手を連れ出して、アプローチもしていないなんて…… 私はディーをチラッと見た。 ……いえ、これは……ディーが殿下からのアプローチに気付いていない可能性もありますわね。 ディーは人からの好意に疎い。 そんなディーが殿下からのアプローチに気付くかどうか…… 私は小さくため息をついた。 「……まぁ、いいですわ。今日はもう帰りましょう」 「え、良いんですか?パーティーはまだ続くんじゃ……」 確かにパーティーはまだ続く。 けど…… 「私たちのやるべき事は終わりましたわ。それに……」 私はディーの頬に触れた。 「少し顔色が悪いですわ。今日は帰って、ゆっくり休んだ方が良いですわ」 そう言うと、ディーは微笑んだ。 「……分かりました」 私たちは学院関係者の皆に挨拶をすると、会場を後にした。

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