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第194話 ∥
目を通した書類は酷かった。
酷いといっても俺からしてってだけで、この世界では一般的なんだろう。
ただあまりにも無駄が多すぎる。
報告書も『ご機嫌麗しく云々』から始まり、色々な常套句が入る。
実際に必要となる報告はほぼ最後の方に書いてある事が多い。
その為、一つの報告に二枚も三枚も書類が届く。
重要な内容が書かれているのは実質、最後の一枚だけ。
無駄の何物でもない。
最初は俺も全部読んでいたけど、2日3日と経つと最初の方はチラッと見るだけで、必要な部分と別けて対処していた。
それでも次から次に書類が届けれ、俺の限界がきた。
俺は急いである書類を製作した。
「ロンド様、すいませんがこの書類に書いた内容を各所に知らせていただいて宜しいですか?」
そう言って仕上がった書類をロンドに渡す。
「……わ、分かった」
ロンドは何故か引き吊った顔でその書類を受け取って部屋を出ていった。
笑顔で頼んだつもりだけど、何であんな引き吊った顔をしたのか分からない。
俺はもう一度机の上に視線を向けた。
何度見ても机の上には大量の書類が積まれている。
俺はため息がでた。
ため息をついた俺の前にお茶の入ったカップが置かれた。
「ディー、少し休憩しましょう。そんな状態で進めては、終わるものも終わりませんわ」
シャロウネは『ね?』と言って笑う。
「ありがとうございます」
俺は出されたお茶を一口飲んだ。
飲んだ瞬間、紅茶の良い香りが口に広がった。
俺はホッと息を吐いた。
「これも食べるといい」
今度はリオネスが俺の前にクッキーをのせた皿を置く。
シャロウネとリオネスも加わって、ちょっとしたティータイムになった。
「さっきの書類は何が書いてありますの?」
そうシャロウネが聞いてくる。
ロンドに渡した書類の内容が気になるみたいだ。
「今後の書類の書き方の指示書です。今の書き方は無駄が多いので」
「どんな指示を出したんだ?」
リオネスも気になってたみたいで、内容を聞いてくる。
「氏名、報告内容、請求内容……要は必要事項だけを書いてくれって指示書ですね。常套句とかが必要なのは分かるんですけど、こっちの方が書く方も読む方も負担が減るかと思って」
そう言うと、リオネスが『なるほど』と何かを考え出す。
そんな事を話していると、各所に通達に行っていたロンドが戻ってきた。
シャロウネが急かさずロンドの分のお茶を用意していた。
「ロンド様、ありがとうございます」
「……別に構わない。それよりあの内容、色々と質問を受けたんだが?」
そう言うとロンドが一枚の紙を手渡してきた。
見ると、質問された内容が書かれていた。
似たような質問は上手くまとめられている。
さすが宰相候補、有能だな。
「これは俺が後で説明しに行きます」
そう言うと、ロンドは頷いてシャロウネが用意したお茶を飲み始めた。
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