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第195話 ∥
俺は質問された内容の説明をするため、各所に赴いた。
というよりは、机に向かってても気が滅入るだけだから気分転換に外に出ろと追い出された。
「今日は暖かいな」
何故かリオネスも一緒に来ていた。
「何故殿下も来たんですか?」
「僕も気分転換がしたかったんだよ」
そう言うリオネスは上機嫌だ。
リオネスは皇太子としての公務もこなしているから、その忙しさは俺の比じゃない。
こんなことでリオネスが気分転換になるなら、まぁいいかと思った。
各所を回って質問の返答を終えて生徒会室に戻る。
リオネスの提案で少し回り道をして戻ることにした。
そういえば、ゆっくり学院内を散策するなんて出来なかったな。
そんな事を考えながら回りに視線を向けた。
「皆、理解してくれて良かったな」
「そうですね」
書類の書き方を変えろなんて、反発する人も居るかと思ったけど、皆わりかしすんなりと理解してくれた。
もしかしたら、リオネスが一緒だったからかもしれないけど……
そう思って、俺はリオネスをチラッと見た。
もしかして、リオネスはこの為に一緒に来てくれたのかな。
しばらくリオネスと校内を歩いてあると、茂みからガサッと音がした。
「…何か居るのか?」
リオネスが音のした方を警戒する。
俺もそっちを見ると、茂みから『ニャー』と声が聞こえてきた。
「…猫の鳴き声」
俺は茂みを掻き分けて声の主を探した。
「ディラント、危ないぞ」
「大丈夫です」
茂みを掻き分けると、そこに居たのは黒いブチの入った成猫。
その猫は俺に驚きはしたものの、逃げる気配がない。
そっと手を伸ばすと、猫は指先の匂いを嗅いだ後、手にすり寄ってきた。
か、かわいい!
逃げずに触らせてくれるなんて、人に馴れてるのかな。
「愛らしいな」
猫を撫でていると、後ろからリオネスが覗き込んでくる。
「ですよね」
「何処からか迷い込んだのか」
「そうかもしれません」
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