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第196話 ∥

(リオネスside) ディラントと歩いてあると、茂みから物音がした。 一瞬警戒したものの、『ニャー』と鳴き声が聞こえて物音の正体が判明した。 その声を聞いて、ディラントが躊躇することなく茂みを掻き分け始める。 危ないと注意してみたけど、ディラントには『大丈夫』と良い笑顔で返されてしまった。 どうやらディラントは猫に興味津々みたいだな。 茂みを掻き分けて出てきたのはブチの入った猫。 突然現れたディラントに驚きはしたものの、逃げる気配はない。 ディラントがそっと手を伸ばすと、猫は少し匂いを嗅いだ後、ディラントの手にすり寄った。 その瞬間、ディラントの表情がパァと明るくなる。 嬉しそうに笑い、猫に話し掛ける。 「愛らしいな」 思わず言葉が出た。 「ですよね」 そう言って、ディラントは満面の笑みを見せた。 「何処からか迷い込んだのか」 僕は誤魔化すように軽く咳払いをしてからそう言う。 「そうかもしれません」 とディラントはまた猫に視線を移した。 その後もディラントは猫と戯れていた。 「ディラントは猫が好きなのか?」 「はい」 そう言って、ディラントはまた満面の笑みを見せる。 「うちに居る子が来たときの事を思い出しました」 「グロウ家では猫を飼っているのか」 「はい、ルオといってフォレスキャットなんですけど、真っ白で賢くてすごく可愛いんです」 あまりに自然に言うものだから聞き流しそうになったけど… 「ちょ、ちょっと待て!フォレスキャット!?」 流石に聞き流すことは出来なかった。 驚く僕に、ディラントはきょとんとする。 貴族の中では、好んで魔物を飼う者も居ると聞いたが…… まさかグロウ家がそうだとは…… 「あ、うちは魔物愛好家じゃないですよ」 僕が何を考えてるのか察したディラントが慌てて訂正する。 「ルオはラジール……俺の執事が数年前に拾った子なんですけど、フォレスキャットの中でも珍しいアルビノで、自然では生きるのが難しいって……」 魔物愛好家の中には、魔物を捕らえ閉じ込める者も居る。 その環境は劣悪と聞く。 ディラントの話を聞く限りでは、グロウ家はそうでないと分かる。 「大切な家族なのだな」 「はい!」 何の迷いもなく返事はするディラントに、自然と笑みが漏れた。 「ルオ、だったか?僕も一度会ってみたいものだな」 猫と戯れながらそんな会話をしていると結構な時間が経ってて、急いで生徒会室に戻ったけどロンドに遅いと怒られてしまった。

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