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第197話 ロンド・オルゼーク
書類の書き方を改変してからは、無駄な常套句が付けられる事も無くなって書類整理がスムーズに進んだ。
そのお陰で時間に余裕が出来た俺は、念願の図書館に来ていた。
ここは王国一の学院ってこともあって、王国中の本が集まる。
その数は膨大で、建物一つが図書館になっていた。
その大きさは、俺の世界のどの図書館よりも大きい。
学生証を見せて中に入ると、その本の数に圧倒された。
図書館の中は、吹き抜けの二階建て。
一階は中央スペースに机や椅子が置いてあり、そこで本が読めるようになっている。
その奥には2mくらいの本棚が並んでいて、壁には天井まで届くくらいの高さの本棚が壁一面に置かれていた。
二階は本棚がメインになっていて、隙間に小さい椅子が置かれているだけ。
俺は国の歴史書は何処かを司書に聞いて、その場に向かった。
案内してくれた司書は目的の場所に着くと、頭を下げて仕事に戻っていった。
俺は周りを見渡した。
誰も居なくて、シンとしている。
本の匂いと少し埃っぽい匂い、逆にそれが落ち着く。
俺は本棚に置かれた歴史書をゆっくりと物色した。
すごいな、伯爵様の邸の書庫室も本が充実してたけど、これは段違いだ。
ゆっくり本の背表紙をなぞっていると、一冊の本に目が止まった。
それは勇者の話を綴った本。
この世界に勇者なんて存在してたのか。
勇者といえば異世界召還だけど……
流石に乙女ゲームで召還勇者はないよな。
そんな事を考えながら、俺は本棚の横に置かれた椅子に腰かけて本を読み始めた。
「ディラント・グロウ」
どれくらい経ったのか、突然名前を呼ばれて現実に引き戻された。
見るとロンドが立っていた。
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