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第198話 ∥
(ロンドside)
ディラント・グロウが書式改変をしてから生徒会の仕事がスムーズに進む。
面倒な様式を省き、必要事項だけの報告書。
手紙でも仕事関係の書類でも、常套句を入れることは貴族内での暗黙の了解になっている。
ディラント・グロウはその常識を仕事の効率の為に変えてしまった。
俺が各所に通達した時、様々な質問を受けた。
それは『本当に大丈夫なんだろうか』とか『様式を省略して睨まれる事はないだろうか』というものが多かった。
こういう報告を担当する者は、子爵や男爵など家格が低い者が多い。
対して生徒会のメンバーは、侯爵に伯爵、王族まで居る。
その気になれば、子爵や男爵なんて簡単に潰せてしまうメンバーだ。
そんな者たちが突然様式を省略しろなんて言われたら不安になるのも頷ける。
その事に対してもディラント・グロウ本人が説明しに行くと出ていった時は驚いた。
まぁ、その時に皇太子であるリオまでついっていくとは思わなかったけど。
王族に言われたら、頷くしかなくなるからな。
リオはそれが狙いで着いていったのか……
いや、リオはただディラント・グロウに着いていきたかっただけだな。
そう思って、俺は一人で納得した。
ディラント・グロウは昔から聡明だなんだと噂されていた。
リオは勿論、国王や父上までもがディラント・グロウを称賛した。
国王に至っては、特例で一年早く学院への入学を進めてしまったくらいだ。
ディラント・グロウはそこまで特別視するような人物なのか、俺には判断出来なかった。
様子を見ることにした俺は、クラスでの生活態度や生徒会での仕事振りをずっと見ていた。
クラスでは基本、シャロウネ嬢と一緒に居ることが多い。
と言うよりは、シャロウネ嬢がディラント・グロウから離れない。
その時のディラント・グロウは少し大人びて見えるものの、年相応なのだと思う。
でも生徒会の仕事となると、また雰囲気が違った。
仕事が早く適切。
適材適所で指示を出し、リオともよく話をしている姿を目にする。
一人で抱え込むのではなく、適度に割り振り、仕事をスムーズに回す。
自分の意見を言いつつ、他人の意見も取り入れ模索する。
上に立つものとしてはすごく好ましい。
そんな姿を見て、国王や父上が何故ディラント・グロウに拘るのか分かった気がした。
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