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第199話 ∥
(ロンドside)
俺は空いた時間を使って図書館に来ていた。
放課後ということもあって、図書館には結構人が居た。
俺は人を避けて二階に移動した。
この図書館は一階部分の読書スペースには結構人が集まるけど、二階は読書スペースが少なく、ほとんど人が居ない。
静かに本を読むには最適だった。
階段を上がって奥に進むと、人影が見えた。
少し近付いて見ると、ディラント・グロウが椅子に座って本を読んでいた。
俺は適当に本を選ぶと、何となくディラント・グロウが見える少し離れた場所に座った。
何気なしにディラント・グロウを眺めていた。
ディラント・グロウは本に視線を落とし、動く気配はない。
文字を追うように微かに目だけが動いていた。
「失礼いたします」
どれくらい経ったのか、司書に声を掛けられる。
「閉館のお時間となっております。退館頂きますようお願いいたします」
そう言われて、時計を確認すると結構な時間が経っていた。
司書は次にディラント・グロウの方に向かった。
「待て、彼には私から伝える」
そう言うと、司書は頷いて下に降りていった。
ディラント・グロウに近付くと、ディラント・グロウいまだに本に視線を落としている。
どうやら俺に気付いていないみたいだ。
……すごい集中力だな。
集中しているところを邪魔するのは気が退けるが…
閉館時間が迫っているってことで、俺はディラント・グロウに声を掛けた。
本当に気付いていなかったみたいで、俺が名前を呼んだ途端ディラント・グロウの体が跳ね、弾かれたように俺を見た。
「……ロンド様?」
「閉館時間が迫っている」
そう言うと、ディラント・グロウが窓の外を見た。
「……もうそんな時間なんですね」
「早く出ないと閉められてしまうぞ?」
そう言うと、ディラント・グロウがじっと見てきた。
「もしかして、わざわざその事を伝える為に来てくれたんですか?」
「司書に言われたからな。俺が伝えた方が司書の仕事も減るだろう」
俺がそう言うと、ディラント・グロウがクスッと笑う。
「ありがとうございます。 …でも」
ディラント・グロウが視線を本に落とす。
「全部読めなかったですね」
と少し残念そうな顔をした。
そんなディラント・グロウに、俺は首を傾げた。
「借りて続きを寮で読めば良いんじゃないのか?」
そう言うと、ディラント・グロウが『あ~』と微妙な表情をする。
「…決められた時間以外での読書は禁止されてるんですよね」
「誰に?」
「シャーネと従者たちに……」
「……何かやらかしたのか?」
シャロウネ嬢は兎も角、従者にまで禁止されるというのは、その行動に問題があるという事だ。
「……食事の時間を忘れたり、気付いたら朝だったり……」
ディラント・グロウがバツが悪そうに顔を背けてボソッと呟く。
「……を、度々……」
禁止されるくらいだから、一度ではないと思ったけど……
「……それは自業自得だな」
「……ですよね」
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