203 / 226

第200話 ∥

ロンドも本が好きみたいで図書館で一緒になることが多かった。 一緒になっても、喋ることもなくお互いが好きな本を読んでいた。 ロンドは閉館時間になると、集中して時間を忘れた俺に声を掛けてくれるようになった。 その頃には顔を会わせる度に睨まれたりすることもなく、笑顔も見せてくれるようになった。 これは、少しは仲良くなれたのかな。 ただ一つ、気になることがあった。 「ディラント・グロウ?どうかしたのか?」 図書館からの帰り、見ていた俺にロンドがそう聞いてくる。 「……ロンド様、いい加減フルネームで呼ぶのは止めてくれませんか?」 そう言うとロンドは『何か問題でも?』とでも言うように首を傾げる。 俺はそんなロンドにため息をついた。 「俺の事は『ディラント』で良いですよ」 「……ディラント?」 確認するように名前を呼ぶロンドに俺は頷いた。 「分かった、これからはディラントと呼ぶことにする。それから俺の事は『ロンド』で良い」 『様』はいらないとロンドは言う。 「……ロンド?」 本当に良いのかと思いつつ、俺も確認するように呼んでみた。 そうすると、ロンドは優しく微笑んだ。 「おい!お前!」 図書館からの帰り、ロンドと廊下を歩いていると、突然後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。 振り返って見ると、見知らぬ男子生徒が立っていた。 「……ロンドの知り合いですか?」 「……いや、俺は知らないな」 俺はもう一度その男子生徒を見てみるけどやっぱり知らない。 でもその生徒は明らかに俺たちに怒りを向けてくる。 「おい!何を黙っている!」 どうしようかと悩んでいると、その生徒がまた怒りを露にする。 「何とか言ったらどうなんだ!ディラント・グロウ!」 …はぁ!?俺!? 「……あの…失礼ですけど、どちら様ですか?」

ともだちにシェアしよう!