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第201話 ∥
「この僕を知らないとは……これだから下賎の者は……」
そう言ってその生徒は馬鹿にしたように笑う。
「貴方とは初対面ですよね?初対面の貴方をどうして俺が知ってると?」
貴族特有の知ってて当然って考え、面倒臭いな。
そう思って、俺はため息をついた。
「まぁ、それは良いです。 ……で?俺に何の用ですか?」
俺の態度が気に入らなかったのか、その生徒にまた怒りが滲む。
「お前にその場は相応しくない!今すぐ辞退しろ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ロンドside)
当然現れた生徒はディラントに向けて『今すぐ辞退しろ!』と叫ぶ。
ディラントの立場を妬む者か……
ディラントをチラッと見ると、面倒臭そうな表情をしている。
「俺が辞退したところで、貴方には関係ないと思いますけど?」
「お前が居なければ、僕がそこに居る筈だったんだ!お前に殿下の傍は相応しくない!僕こそが殿下の傍に相応しいんだ!」
またこういう輩か、と呆れてしまった。
俺は勿論、特に王族であるリオにはこういう輩が寄ってくる。
王族と繋がりを持てば、それなりの地位が約束されると思ってる。
王族と繋がりを持ったとしても、個人の能力が低ければ地位を得るなんて有り得ないのに。
「お前はスラム出身だろう?そんな奴が殿下に近付いて何を企んでいる?」
「確かに俺はスラム出身です。でもその事で何かを企むなんてしません」
「嘘だ!どうせ地位や名誉が欲しいんだろう?その為に殿下に近付いたんだろう?」
この発言はディラントを友人と公言しているリオをも貶してる。
完全なる不敬だ、こいつはその事に気付いてないのか?
「へぇ」
そんな事を考えていると、冷たい声が響いた。
声のした方を見ると、ディラントが笑っている。
でもその笑顔は明らかに怒気を含んでいた。
「俺は地位や名誉には興味ないけど、貴方は違うみたいですね。友人になったからには相応の立場を用意しろと、そういうことで良いですか?」
「なっ!?ち、違う!僕は殿下の為を思って」
「あれ、違ったんですか?俺にはそのように聞こえたんですけど?」
笑顔を絶やさずディラントは言う。
その笑顔に寒気すらした。
「そもそも殿下の為って言ってますけど、殿下が望んだ事ですか?殿下が貴方にそう言ったんですか?」
ディラントがそう言うと、絡んできた生徒が馬鹿にしたように笑う。
「言わなくても分かる。殿下の傍には僕のように優れた者が居るべきなんだ。お前のような下賎の者は殿下の傍に居るべきではない」
その生徒がそこまで言うと、ディラントが吹き出した。
しばらくクスクスと笑う。
「…すいません、貴方が余りにも馬鹿な発言をするので」
「なっ!?なんだと!?」
「独り善がり、自意識過剰、救いようがないですね。俺が居なくなったくらいで立ち替われるとでも?SクラスどころかAクラスにすら入れない貴方が?」
そう言うディラントに、俺はその生徒のクラス章を見た。
その生徒のクラス章はB、勝負にすらならない。
「そんなに殿下とお近付きになりたいなら、俺なんかに構わず直接殿下に頼んでみては如何ですか?少しは希望があるんじゃないですか?まぁ、選ぶのは殿下ですけど」
ディラントが生徒を見てクスッと笑う。
「選ばれると良いですね」
そう言ってディラントは『行きましょう』と俺の手を引く。
俺はもう一度その生徒を見ると、生徒は落胆していた。
リオに直接頼んだところで、あの生徒が選ばれる事はない。
ディラントもそれを分かってて言ったんだろう。
正論だけど、ディラントはわざとそれを嫌みとも取れるように言った。
こいつ、思いの外性格が悪かったんだな。
そう思って、俺は思わず笑ってしまった。
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