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第203話 休日

学院に入学して一ヶ月が経った。 俺がスラム出身ってことは隠してないから、俺の立場を良く思っていない生徒からは絡まれたりするけど、その都度言い負かしてるし、手を出してくる人に限っては返り討ちにしたり、たまに殿下やロンドも庇ってくれたりもした。 そのお陰で比較的平和に過ごしていた。 今日は休日ということもあって、アランとラジールに付き合ってもらって、寮の庭を借りて武術の訓練をしていた。 学校がある日はがっつり出来ないから、休みに思う存分体を動かす。 今日は1対2の模擬戦をやっていた。 「ラジール、アラン、本気で来てください」 二人にそう言うと、二人とも困った顔をする。 「……そんな事を言われてもなぁ」 とラジールがぼやく。 「……ディラント様を傷付ける訳にはいかないので」 とアランが困ったように笑った。 「本気で来てくれないと訓練にならないんですよ!」 アランとラジールは訓練の相手をしてくれるものの、必ず手加減をする。 武器を使ってもいいと言っても必ず素手でやる。 気に掛けてくれるのは嬉しいけど、手加減されたら訓練にならない。 そんな事を考えながら見つめてると、二人がため息をついた。 「……分かりました」 アランがため息をつきながら言う。 「……仕方ないな」 とラジールが頭を掻きながら言った。 漸く本気で来てくれるように…って言っても、まだ若干手を抜かれてるような気がするけど…… さっきよりはちゃんと相手をしてくれる二人と、思う存分体を動かした。 二人と手合いを始めてどれくらい経ったのか、俺は疲れて息が切れていた。 二人を見ると汗はかいているものの、息は切れていない。 「……なんか、俺だけ疲れてるみたいだ」 そう呟くと、二人が苦笑いを浮かべる。 「ディラント様とは体格差がありますから」 「ディラントとは体力差があるからな」 とアランとラジールにほぼ同時に、慰めているのか貶してるのか分からない事を言われた。 二人の返答に納得がいかなかなくてむくれていると、二人に笑われた。

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