211 / 226
第208話 ∥
(リオネスside)
シャロウネ嬢と合流して向かったのはカフェ。
レストランにでも行くのかと思っていた僕はちょっと意外だった。
カフェは軽食は出すもの、ちゃんとした食事はない。
「殿下、ロンド様、このような場所で申し訳ありません」
そう言ってシャロウネ嬢が頭を下げる。
「いや、僕は構わないよ」
「俺も問題ない」
そう言うとシャロウネ嬢はホッと息を吐いた。
カフェに入ると、仕切りの置かれた半個室に通された。
そこは大きめのテーブルに椅子が4脚置いてある。
僕とシャロウネ嬢が奥に、僕の横にロンド、シャロウネ嬢の横にディラントが座った。
シャロウネ嬢の話では、この店はメニューにランチセットがあって、そこそこしっかりした食事が出来るらしい。
シャロウネ嬢が店員にランチセットを3つとスープの単品を注文した。
「……どうして3つなんだ?」
4人で来ているのに、3つしか頼まないことが疑問だった。
「それは……」
シャロウネ嬢がディラントをチラッと見る。
「セットだと、俺が食べきれないからです」
シャロウネ嬢の代わりに、ディラントがそう答えた。
「食べきれない?」
ディラントの返答にロンドも首を傾げていた。
ディラントの話では、スラムに居た頃は食事環境が劣悪で、まともな食事をした記憶がないらしい。
グロウ家の養子となった後も食べられる量はあまり増えなかったということだ。
「当時よりは増えたんですけど、それでも少ないみたいで」
そう言ってディラントは困ったように笑った。
「ディーになんとか食べて貰おうと、うちの料理長たちが悪戦苦闘してましたわね」
とシャロウネ嬢が当時を思い出すように言う。
ディラントがそんな苦労をしていたなんて知らなかった。
僕が会ったときには、ディラントは既にグロウ家の一員だった。
あの時、もっと早くディラントに会ってれば何とか出来たんだろうか。
……いや、あの頃の僕には無理だな。
王子という立場に胡座をかいて、傲慢な態度をとっていた。
もし、あの頃に出会っていたとしても、僕はディラントに見向きもしなかっただろう。
そう考えたら、少し気落ちした。
ともだちにシェアしよう!