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第209話 ∥
昼食を終えて戻る最中、俺はリオネスに視線を向けた。
俺の話をしてからリオネスの様子がおかしい。
どこか落ち込んでいるように見えた。
「……殿下、どうかしましたか?」
そう言って俺はリオネスを覗き込んだ。
リオネスがどこか言い淀む。
言いたくないなら無理には聞くつもりはないけど、何となくリオネスを見つめた。
そうすると、催促されたと思ったのかリオネスがポツポツと話し始めた。
「ディラントは幼少の頃に苦労をした。グロウ家に保護されて今に至るが、もっと前に出会っていれば、僕が何とか出来たのではないかと……」
リオネスは俺を助けたいと思ったのか。
でも……
「……それは無理じゃないかな」
当時のリオネスって、言っちゃ悪いけどかなりの悪ガキだったし……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(リオネスside)
ディラントの『無理』と言う言葉が突き刺さった。
「……早く出会っていれば、ディラントと友人になるのも早くなってたと、思ったんだが」
そう言うと、ディラントが何か考える素振りをする。
「……それも無理かと」
また『無理』と言う言葉が突き刺さる。
「俺と殿下はお互いの第一印象が最悪でしたし、あのままだと確実に険悪な仲になってたでしょうね」
『最悪』と言う言葉と『険悪』と言う言葉が突き刺さる。
さっきからのディラントの言葉の刃に、僕はもう瀕死状態だ。
「…ディ、ディー、その辺りで勘弁してあげてください」
シャロウネ嬢が察してディラントを止める。
ディラントは意味が分からないみたいで、首を傾げていた。
ロンドに至っては、笑いを堪えて震えていた。
「……僕では、ディラントと仲良くは出来ないようだ」
ショックで声が震えてしまった。
「え、違いますよ!?」
ディラントが何かを察したように慌て出す。
「俺が言ったのは出会った当初はって話です」
「出会った当初?」
僕は訳が分からず首を傾げた。
「確かに出会った当初は俺は殿下に良い印象を持ってませんでした。でも今は違いますよ」
そう言ってディラントはクスッと笑う。
「俺がグロウ家に引き取られて、殿下とあのような出会いをして……多分、どれが違っても今のような関係にはならなかったと思います。今は殿下を大切な友人だと思っていますよ……って、こんな事言ったら不敬ですね」
そう言ってディラントは困ったように笑う。
僕はそれに対して、首を降った。
「それは気にしなくていい。それに、ディラントが僕の事を友人だと言ってくれて嬉しい」
そう言うと、ディラントも嬉しそうに微笑んだ。
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