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第210話 オルト・ハーク
教室でシャロウネと談笑していると、突然大きな音と共に扉が開いた。
その音に驚いて、全員の視線がそちらに向く。
その音を出した本人は、その視線をものともせず、何かを探すようにキョロキョロと周りを見回していた。
「なんですの?あんな大きな音を発てて」
そう言ってシャロウネが嫌そうな表情を見せる。
「……さぁ?」
シャロウネには知らないふりをしたけど、俺は彼を知っていた。
オルト・ハーク
騎士団団長の息子で、オルト自身も騎士を目指している。
イノラバの攻略対象の一人だ。
確か脳筋で思い込んだら一直線って設定だった。
強い相手に勝負を挑むのが好きな戦闘バカでもある。
そんな事を考えながらオルトを見ていると、バチッと目が合ってしまった。
俺を認識したオルトがニィっと笑う。
その瞬間、嫌な予感がした。
目が合ったオルトが、真っ直ぐ俺に向かって歩いてくる。
俺の傍に来ると、ばんっと音を発てて机に手を置いた。
「お前、ディラント・グロウだな?」
「……そうですけど」
「お前、強いんだってな。なら俺と勝負しろ!」
そう言ってオルトは当然のように胸を張る。
「え、お断りします」
俺がそう言うと、オルトは驚いた顔をする。
断られたことが意外みたいだ。
「何故だ!?」
「貴方と戦う理由がありません。それに名乗りもせずにいきなり戦えなんて、失礼だと思いますけど?」
そう言うとオルトはハッとした。
オルトがピシッと姿勢を正す。
「失礼した、俺はオルト・ハークという」
そう言ってオルトは胸に手を当てた。
こういうところは流石だと思う。
オルトは茶髪茶眼の俺の世界だとサッカー部とかに居そうな爽やか少年といった感じだ。
騎士候補ということもあって、その体躯にはしなやかな筋肉がついている。
「よし!じゃあ勝負しよう!」
名乗ったから良いだろうとでも言うように、オルトはそう言ってニカッと笑う。
さっきまでのピシッとした騎士のかっこよさは消え去った。
やっぱりオルトは脳筋の戦闘バカだ。
俺はそんなオルトに微笑んだ。
「お断りします」
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