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第215話 ∥
審判の『始め!』という合図でオルトが木剣を振りかざして攻めてきた。
俺はその剣を避けた。
オルトは確か小さい時から父親に剣の稽古を受けていた。
オルトの父親は王宮の騎士団団長で、事実上、王都最強の騎士だ。
そんな父親から剣術を教わっていたオルトもそれなりに実力があると思っていた。
剣筋は悪くない。
体感もしっかりしてるし、体重移動も上手い。
幼少からしてきた事がしっかり身に付いてる。
ても直線的な攻撃はまだ良いとして、やたらと大振りな攻撃が多い。
しかも振り抜いた後に僅かに隙が出来る。
これはどういうことなんだ?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(オルトside)
学院に通い始めてすぐ、絡んでくる奴らを全て返り討ちにしている奴がいると噂になった。
噂の主は首席で生徒会長も務めている、ディラント・グロウ。
入学式や歓迎パーティーで姿を見たことはあるけど、小柄で華奢なイメージでとても強そうには見えなかった。
リオネス殿下やロンドとも親しいみたいで、俄然興味が湧いた。
実際に会ったディラントは本当に華奢で、少し力を入れたら壊れてしまうんじゃないかとさえ思った。
でも、そんな考えはすぐに打ち砕かれた。
ディラントは確かに見た目は華奢で弱そうだけど、全くって言って良いほど隙がない。
強いと思った。
もしかしたら、ディラントと勝負をすれば今俺がぶち当たってる問題も解決するんじゃないかと、直感だけどそう思った。
その後はディラントに何度も勝負を申し込んだ。
そしてその度に断られた。
ディラントの姉君、シャロウネ嬢の助言もあって、漸くディラントが勝負を受けてくれた。
ディラントが剣を扱えない事は驚いた。
正直、武器を持たない人を相手にするのは気が引けた。
それもディラントに煽られ、上手くのせられた。
俺は父の訓練を受けてきて、騎士科では一番強いのだと思っていた。
でもそれが過信だったのだと突き付けられる。
審判の合図でディラントに斬りかかったが、その攻撃をいとも簡単に避けられる。
何度攻撃を繰り返しても、結果は同じだった。
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